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非核を問う 「密約」報告書公表 <中>

■記者 岡田浩平

ピースデポ特別顧問 梅林宏道氏

 ―外務省有識者委員会の報告書の評価は。 
 分析は非常に妥当だ。政府は日米で核持ち込みについて解釈の違いがあると認識した上で、あるはずのない米側からの事前協議がないのを理由に「持ち込みはない」と繰り返してきた。それを「不正直」としたくだりは正確に実態をとらえている。政府はけじめをつけるため、国民にきっちり謝罪しなければならない。

  ―岡田克也外相は核搭載艦船の一時寄港は事前協議の対象と明言しましたが、米側と解釈の違いを解消する意思はないようです。
 現時点で今後の問題が非常にあいまいで「画竜点睛を欠く」と感じる。裏表なく一時寄港は事前協議の対象であるとの立場を米国にきっちり伝え、時間をかけても解決する意思を示すべきだ。透明性のある外交に国民も納得し、国際社会に対しても国民世論を基にした核兵器廃絶への発信力が高まる。

 ―米国の方針を変えるのは可能ですか。 
 確かに米国にしてみれば、核兵器の有無について個別に否定も肯定もしない「NCND政策」の変更を迫る問題だという議論が出る。しかし、時間はかかるが日本との関係では政策全体を見直さなくても解決できる。米国は日本から離れていても核抑止力を行使できる能力があるうえ、核兵器を含む武器をかなり以前から洋上補給しているからだ。

 ―政府が核抑止力を求める限り、非核政策の矛盾は消えないのでは。
 政府の責任として核兵器で国民を守る、という主張に、国民が説得されている面が多分にある。いきなり「核の傘を出る」とは言えないかもしれない。しかし方向性を明示せず、現に核の傘に依存しているというだけでは、被爆国の道義的責任を果たせない。

 日本はただちに核兵器に依存しないという政策を打ち出すべきだ。方法論として北東アジアの非核兵器地帯化がある。非核兵器地帯を目指すと表明すれば、いずれ核の傘から離脱するという政府としての意思もはっきりする。

うめばやし・ひろみち
 1998年にピースデポを設立。2000~08年に代表を務めた。核軍縮・不拡散議員連盟(PNND)東アジア・コーディネーター。72歳。

(2010年3月22日朝刊掲載)

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