×

ニュース

原爆症 広島訴訟が終結 原告、控訴取り下げ 基金法成立後初

■記者 滝川裕樹、野田華奈子

 原爆症認定集団訴訟の第2次広島訴訟で、被爆者22人全員が28日、広島高裁への控訴を取り下げた。一連の集団訴訟の敗訴原告を救済する基金法が1日に成立したのを受けた。全国弁護団によると、現在、最高裁や各地の高裁で係争中の原告も基金法が施行される来年4月までに取り下げる方針。初の提訴から6年を超す法廷闘争は、被爆者が国を動かす形で決着する。

 第1次広島訴訟の原告は9月に控訴を取り下げており、広島での訴訟はすべて終結した。全国弁護団によると、同法成立後、原告側の取り下げによる終結は初。

 広島訴訟の原告弁護団は「基金法が成立したことと、2010年1月中に厚生労働相との定期協議が開かれるめどがたったため」と説明。一方で原爆症認定の審査の遅れを指摘し「改善されなければ再び訴えることも辞さない」としている。

 集団訴訟をめぐっては、2003年4月から全国17地裁で提訴され、11月30日までに原告側が21連勝した。こうした中、8月6日、当時の麻生太郎首相と日本被団協が終結の確認書を交わした。

 第2次訴訟は広島、呉市などの被爆者が原爆症認定申請の却下処分取り消しと損害賠償を求めた。広島地裁は3月、初の国家賠償を命じたが、2人を原爆症と認めず、双方が控訴した。国は既に控訴を取り下げている。

 広島訴訟の原告団副団長、玉本晴英さん(79)=広島市安佐南区=は「原告以外に苦しんでいる被爆者がまだたくさんいる。定期協議の場で原爆症の早期認定を申し入れたい」としている。

 日本被団協代表委員として麻生首相と確認書を交わした広島県被団協の坪井直理事長は「訴訟は原爆被害を実際より小さくとらえてきた政府の態度を改めさせる成果があった。これからの厚労相との協議が課題」と話す。

 もうひとつの広島県被団協の金子一士理事長は「大勢の原告が精いっぱい闘ってきた。問題は残っているが、裁判の形では一つの区切りが付いた」と述べた。

(2009年12月29日朝刊掲載)

関連記事
原爆症認定 2次提訴 大阪地裁(09年12月25日)
原爆症基金法が成立 3億円政府拠出 原告全員救済に道(09年12月 3日)
控訴取り下げ正式決定 原爆症訴訟 第1陣41人(09年9月14日)

年別アーカイブ