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岐路に立つ「平和五輪」 広島市「単独」も視野 次回検討委がヤマ場

■記者 長田浩昌

 広島、長崎市を中心にした複数都市開催による「平和五輪構想」が岐路に立たされている。日本オリンピック委員会(JOC)が2020年夏季五輪の共催案を拒否する見解を示したことを受け、秋葉忠利広島市長は「広島単独開催」を模索する姿勢もみせるが、財政面など実現への道筋は不透明になった。日程を調整している招致検討委員会の次回会合がヤマ場となる。

 今後の議論の方向性としては、広島市が単独で名乗りを上げ、長崎市など賛同自治体がサポート▽再挑戦を表明した東京都を「平和五輪」の理念で支え、マラソンなど一部競技の実施や障害者を対象にしたパラリンピック招致といった連携策を検討▽青少年のユース五輪や関連行事を招致▽複数都市開催の方針維持―が想定される。

 単独、共催どちらにしても五輪の招致検討を継続した場合、広島市などは「唯一の被爆国」である政府に、財政面も含めた「平和五輪」への全面支援を要請。核兵器廃絶に向けた強い意志を国際的にアピールする意義を伝える。

 さらに国際オリンピック委員会(IOC)からの情報収集も進め、実現への可能性を追求するとみられる。国内世論の盛り上げも引き続き図る。

 広島、長崎市は2010年春にも2020年夏季五輪招致に名乗りを上げるかどうかを最終判断する方針だ。ただ、早ければ2010年夏とみられていた国内立候補地の選定時期について、JOCが2011年春に延期する可能性に言及。両市が最終判断の時期を遅らせることもあり得る。

 2020年夏季五輪の招致検討については、広島市の秋葉市長と長崎市の田上富久市長が10月11日に表明。「1都市開催」を定める五輪憲章を承知のうえで、施設整備などの負担分散を狙う複数都市による開催を掲げた。

 しかし、JOCの竹田恒和会長は12月25日、両市長にIOCの見解を基に「憲章を守る立場のJOCは、共催案を推薦することはできない」と伝えた。一方で、12月12日にあった招致検討委の2回目の会合には、大阪府や大阪市、北九州市など23自治体の首長や幹部が出席し、賛同の輪が広がっている。

(2009年12月31日朝刊掲載)

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