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2009年県内重大ニュース 原爆・平和

「全員救済」 終結に道筋

■記者 長田浩昌

   原爆症認定集団訴訟は「原爆の日」の8月6日、国と原告側が解決に向けて合意した。広島市の平和記念式典参列後、麻生太郎首相(当時)と日本被団協が中区のホテルで訴訟終結の基本方針の確認書を交わした。

 2003年4月の最初の提訴からこの時点で約6年4カ月。麻生首相は記者会見で「原告のご高齢と長きにわたり訴訟にかかわったことにかんがみ、司法判断を尊重し早期救済の方針を決断した」と強調した。だが、19連敗の国側が被爆者の訴えにようやく応えたのが実態だった。

 確認書の内容を踏まえ、集団訴訟の敗訴原告を救済する基金に国が補助する法律が12月1日、衆院で成立。10年4月1日施行が決まり、原告側が求めた「全員救済」での終結に道筋がついた。

 一方、原爆症認定は訴訟の結果を受けた審査基準の緩和で申請者が急増。審査待ちの状態が11月末で8千件に上る。新政権による制度の抜本的見直しが急務だ。


核廃絶へ機運チェンジ

■ヒロシマ平和メディアセンター編集部長 江種則貴

 核兵器は廃絶できるとの機運が一気に盛り上がり、被爆地は勇気づけられた。

 日米の政権交代がきっかけ。米国のオバマ大統領は4月のプラハ演説で「原爆投下国の道義的責任」として核兵器廃絶への努力を誓った。鳩山由紀夫首相も「廃絶の先頭に立つ」と明言した。

 世界の識者らの提言も相次いだ。ノーベル平和賞を受賞した17人が連名で中国新聞を通じて「ヒロシマ・ナガサキ宣言」を発表。核不拡散・核軍縮に関する国際委員会(ICNND)は10月の広島会合で論議を締めくくり「2025年までに世界の核弾頭を2千発以下に」との報告書をまとめた。もっとも廃絶の目標時期は明示せず、批判も浴びた。

 中央アジア、アフリカで非核兵器地帯条約が発効。一方、核開発を進める北朝鮮に世界は強く抗議した。

 むろん廃絶への具体的な取り組みはこれから。オバマ大統領の被爆地訪問の実現とともに、被爆65年が正念場となる。

(2009年12月30日朝刊掲載)

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