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連載・特集

核兵器はなくせる 第12章 扉を開くとき <5>

■記者 「核兵器はなくせる」取材班

全世界に「非核の傘」を

 核兵器禁止条約などと並び、核兵器廃絶への効果的なステップの一つとされるのが非核兵器地帯条約だ。エリア内での核兵器の開発や保有、通過などを禁じることにより、地域内の安全保障を高め、同時に核兵器保有国の行動を縛る。

 昨年発効したアフリカ(西サハラを含む54カ国)と中央アジア(5カ国)をはじめ、既に地球上の5地域が「非核の傘」の下にある。単独での「非核地位」を宣言し国連総会が承認したモンゴルを加えると計119カ国・地域。国連加盟192カ国の6割以上を占める。

 このほか、一部国家や政治家、非政府組織(NGO)の間で議論が進むのが中東と北東アジアの2地域だ。それぞれ事実上の核保有国イスラエル、核保有宣言をした北朝鮮を含むため、両地域の非核地帯化には、この2国の非核化が最大の課題となる。

 5月28日に閉幕した核拡散防止条約(NPT)再検討会議。採択にこぎつけた最終文書は、北朝鮮の核実験を強く非難し、核兵器の放棄を求めた。中東については「大量破壊兵器が存在しない中東地域をつくりだすため、地域のすべての国家が参加する会議を2012年に開催する」との文言が盛り込まれた。

 NPT未加盟のイスラエルはすぐさま「決定に従う義務はない」と反発したものの、エジプトなどの粘り強い働きかけが、中東地域をめぐる具体的な文言につながった。

 中東ではイラクがかつて「貧者の核兵器」といわれる化学兵器(毒ガス)を使用した。イランには現在、核開発疑惑がある。そうした不安定な中東情勢の根源に、イスラエルの核兵器保有問題があるのは疑いようがない。今年4月にテヘランであった国際会議でも、アラブ諸国を中心にイスラエルへの批判が相次いだ。

 一方、各地の非核兵器地帯条約エリアはそれぞれ、保有国の行動を縛る追加の方策を追求している。エリア内を核攻撃しないと保有国に約束させる「消極的安全保障」だ。まずラテンアメリカおよびカリブ地域(33カ国)で実現した。

 北東アジアでは、この消極的安全保障を先に実現することが、非核地帯形成の鍵とも言われる。エリア外から核攻撃されない状況をつくり出すことにより、足踏み状態が続く北朝鮮の核放棄に進展の糸口を見いだそうとする考え方だ。

 現在、核兵器を保有するのはイスラエルや北朝鮮を含めても9カ国。これに対し、大勢を占める非保有国は地球上に非核地帯を広げてきた。その歩みは、国際社会の多数派からの明確な「非核」のメッセージ。ならば北東アジア非核化の取り組みの先頭に立つべきなのは、ほかならぬ被爆国日本政府ではないか。

(2010年6月18日朝刊掲載)

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