×

ニュース

父失った谷川さん作の原爆漫画  複製原画など公開

■記者 東海右佐衛門直柄

 原爆投下12年後の1957年に連載された漫画「星はみている」の原画の複製や掲載誌の公開が6日、広島市中区の原爆資料館東館で始まる。描いたのは、原爆で父を失った漫画家谷川一彦さん(1936~2008年)。原爆を題材にした最も早い年代の漫画とみられ、資料館は「『はだしのゲン』など原爆漫画の源流」と評価している。

 原爆で父親の行方が分からなくなった少女が、母の形見の指輪に隠された謎を探る物語。1957年1~12月に月刊誌「なかよし」に連載された。

 公開されるのは、原画の複製16枚、「なかよし」の12月号、ダイジェスト版の表紙など。焼け尽くされた広島の街や、後障害で親友が亡くなる場面などが描かれた連載誌のコピーも発行元の講談社の許可を得て展示し、来館者が読めるようにする。31日まで。

 資料館によると、谷川さんは広島県安村(現広島市安佐南区)出身。広島市鷹匠町(現中区本川町)で勤務中の父親が原爆で行方不明となり、自身も「黒い雨」が降るのを自宅で見たという。

 谷川さんは、可部高在学中に漫画雑誌へ投稿を始めた。「なかよし」「少女クラブ」などに作品が掲載されるようになり、その一つが「星はみている」だった。1960年ごろには、手塚治虫さんの虫プロダクション(東京)に就職。「鉄腕アトム」などの作画を担当したが、1970年ごろに病気で退職した後は漫画と距離を置いていた。

 戦後の原爆をテーマにした漫画を調べていた資料館が約2年前、大阪府吹田市の府立国際児童文学館(現在は休館)で「星はみている」の掲載誌を発見。今回の展示は講談社や漫画収蔵家、遺族から原画や関連資料を借りて企画した。

 中沢啓治さんの「はだしのゲン」の連載が始まったのは1973年。その16年余り前の谷川さんの作品について、資料館は「原爆への偏見があった時代に、挑戦した作家の意志を感じてほしい」としている。

(2010年1月5日朝刊掲載)

   

年別アーカイブ