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連載・特集

ヒロシマ 次代の表現 <2> ヒップホップユニット EXCUSE

■記者 伊東雅之

軽快リズムで平和希求

 「君は見えるか? ヒロシマの姿 これが人のあり方…」

 軽快なリズム、語感で流れる米国生まれのヒップホップの曲から「ヒロシマ」や「Peace」の詞が響く。

 ユニット・EXCUSE(エクスキューズ)を構成する「K―C(ケーシー)」こと佐東弘一さん(31)と、「APE―LAW(エイプロウ)」こと中田裕介さん(30)が、ヒップホップのリズムに乗せて歌う曲は「ヒロシマの姿」。厳かに歌われることの多いヒロシマを自分たちのリズムで作品にし、5年前から市内のライブなどで歌ってきた。

 5分7秒のこの歌は、合唱部分とソロパートで構成される。合唱部分はヒロシマを伝えることの大切さを訴える。「『Peace』 one time 『Peace』 one life」のフレーズに「一人一度の人生、皆が平和に生きるため」の意を表現。曲中、何度も繰り返す。

 ソロパートは、それぞれの思いを自由に作詞した。「あの赤く壮絶な世界を 『平和であれ』そう切な願いを 『伝えたい』だけど絶えない争い…」「荒れた大地に芽が出 花が咲き 種が舞って広がり…」。中田さんは、今も戦争に明け暮れる人間への憤りとともに、人の心に「花が咲く」日を願う。

 「犠牲となった沢山の願いを 俺たちは今生きて 何が出来るか?」。佐東さんは今を生きる自分たちに問い掛ける。「自ら考え、行動しなければ歴史は繰り返す」との警鐘の意を込めた。

 ユニットの代表曲となった「ヒロシマの姿」。曲作りには、広島市で生まれ育った二人の平和に対する危機意識があった。被爆の惨劇は学校や家で幼いころから耳にしてきたが「あまりに身近に聞いてきた話だったからか、当時はさほど気に留めていなかった」。

 だが、半世紀以上たっても無くならない核兵器。一方、被爆者の減少とともに薄れる「あの日」の記憶。二人は、被爆体験の継承の大切さを痛感し、「ヒロシマで活動するアーティストの使命ではないのか」と思うようになった。

 不安も同時に生まれた。「被爆体験のない自分たちが、ヒップホップのリズムで歌っていい内容なのだろうか…」。二人が出した結論は、納得できる作曲技術を身に付けてからの挑戦。「自信のある作品にして、自分たちの真剣さを分かってもらおう」と誓い合った。曲作りの経験を重ねた後、この曲を作った。「詞はすぐに浮かんだ」。ユニット結成から6年後の2005年。折しも被爆60年の年だった。

 すぐにライブでのレパートリーに加えた。「会場の観客も自分たちと体を動かし、口ずさんでくれる。メッセージが伝わっていると実感した」  最近は仕事の関係でライブ出演は減ったが、曲に込めた思いは今も変わらない。「より多くの人とライブと同じ一体感を分かち合いたくて…」。新たな発信手段として、曲を無料でダウンロードできるホームページも開設した。

「ヒロシマの姿」(冒頭部分)

君は見えるか? ヒロシマの姿
これが人のあり方
「平和」ここに意味の何かが潜む
「明日」が眠る在り処だ
悲しみから次のSTEP BY STEP
語り継がれてく若き世代へ
そうだ 皆で伝えて 描いていこう
「Peace」 one time
「Peace」 one life

※ユニットのホームページhttp://sound.jp/excuse/から曲がダウンロードできる

EXCUSE
   小学校時代からの幼なじみの二人が、広島修道大在学中に結成。佐東さんはIT(情報技術)関連会社、中田さんは会計事務所に勤めながら活動を続けている。「Re:mix」などの自主製作アルバムがある。ともに広島市西区在住。

(2010年7月30日朝刊掲載)

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