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「黒い雨」床下の土募る 降った地域 見極めに活用 広島大の星教授ら

■記者 東海右佐衛門直柄

 広島大原爆放射線医科学研究所(原医研)の星正治教授のグループが、広島市や周辺で、終戦から1949年までに建てられた民家の床下の残留放射能調査を進めている。戦後の核実験の影響が少ない土壌の調査により、原爆投下直後に「黒い雨」が降った地域を見極める。2011年度に分析を終え、被爆者援護法に基づく黒い雨の指定区域の拡大にもつなげる。

 調査は、爆心地から50キロの範囲で2009年2月に着手。黒い雨の指定区域のほか、黒い雨が降ったとの証言がありながら区域外となっている「小雨地域」も対象にする。原爆が投下された1945年から、旧ソ連が核実験を始めた1949年までに建てられた建物を見つけ、所有者の協力を得て床下の土壌に核分裂生成物セシウム137があるかどうかを確認する。

 これまでに安佐南区上安や佐伯区湯来町など計13カ所で採取。今後は北広島町などでも採取地点を探す。

 解析は金沢大の低レベル放射能実験施設(石川県能美市)に依頼し、黒い雨の降雨エリア解明と、原爆投下直後の各地点の放射線線量推定に役立てる。

 「黒い雨」をめぐり旧厚生省は1976年、爆心地から30キロまでの土壌の調査結果を公表した。しかし、戦後の米国や旧ソ連、中国などの核実験による放射性降下物の影響もあり、「黒い雨降雨域と他の地域との間に有意差はなかった」とされた。

 核実験は米国に続き、1949年に旧ソ連、1964年には中国が始めた。星教授は「調査対象とする家屋の床下は核実験の影響は限定的。黒い雨について科学的に解明できる」としている。該当する家屋の床下の土を提供してくれる人を募集している。Tel082(257)5872。

黒い雨降雨地域
 国は1976年、爆心地から南北19キロ、東西11キロの楕円(だえん)形の範囲を、被爆者援護法の「健康診断特例区域」に指定。国が定める11種類の病気を患っていれば、被爆者健康手帳の交付を受けられる。「黒い雨」が降ったとの証言がありながら区域外となっている「小雨地域」(佐伯区と安佐南区の多くや安佐北区など)で、健康診断特例区域のエリア拡大を求める動きがある。

(2010年1月9日朝刊掲載)

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