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『直言』 松井新広島市長 <下> 県との連携を密接に にぎわい創出 一体で

■記者 金崎由美

広島経済同友会筆頭代表幹事 高木一之氏(71) 

 ―経済界は松井一実新市長に何を期待しますか。
 就任前にお会いしたが、人の話をきちんと聞く印象を受けた。率直に意見を言い合える関係でありたい。折に触れて情報交換できる場を設けてほしい。新市長は、地域経済の活性化と都市としての中枢性の向上、官民の連携強化を一貫して訴えている。目線はいい。その方向で力を尽くしてほしい。「内政は任せんさい」との言葉に期待している。

 ―中枢性の向上を担う事業が旧市民球場の跡地利用です。現在の計画を見直す新市長の意向をどうみますか。
 個人的には跡地問題は決着したと思っていたので少し驚いた。2013年に全国菓子大博覧会を開くことが前提なら、「若者中心のにぎわいの場」を目指すという新市長の姿勢でいい。都心の立地をどれだけまちづくりに生かせるか。地域活性化の鍵を握っている。

 ―具体的にはどう整備すべきでしょうか。
 原爆ドームと平和記念公園の一帯が祈りのゾーンなのに対し、道路を隔てた旧市民球場側は、未来への夢が持てるゾーンとして交流人口の拡大を図るべきだ。紙屋町地下街シャレオは球場に近い地点ほど活気を失っている。旧市民球場の跡地と地下街を連動させることが急務といえる。

 ―JR広島駅一帯の再開発は懸案です。助言はありますか。
 広島駅の南口と北口の一体化が必要。紙屋町・八丁堀と並ぶ新都心とするため、しっかり取り組んでもらいたい。駅北側は整備が進んできた。(市が建設を予定する)広島駅の自由通路に加え、路面電車を北口まで延ばし南北をつなぐ考え方もある。JRとの調整や財政的な問題もあるが、先を見据えた再開発をしてほしい。

 広島駅は、近隣の府中町や廿日市市なども含めると約140万人の陸の玄関口だ。福岡市の博多駅のように、駅前の拠点性はもっと高められる。

 ―どんな都市経営を求めますか。
 市は、中長期的な視野でかじ取りをしてもらいたい。東日本大震災の影響で、企業がサプライチェーン(部品などの調達・供給網)を東日本から西日本にシフトさせる動きが強まるだろう。また、震災の復興の過程では企業誘致をめぐり、新たな都市間競争が起きることが考えられる。

 新市長には、常に先手を打つまちづくりを求めたい。そのためには市と県、経済界の意思疎通を活発にし、それぞれの役割分担に関しコンセンサスを図ることが大切。そして市長と知事は連携を密にし、地域の一体化を進めてもらいたい。

たかき・かずゆき
 慶応大経済学部卒業後、1968年に広島信用金庫に入庫。企画部長、常務理事、専務理事を経て2001年に理事長。09年6月から会長。同年4月から広島経済同友会の代表幹事となり、11年4月19日に筆頭代表幹事に就いた。

旧市民球場跡地利用計画
 5・5ヘクタールのうち8割を緑地広場に整備。広場は2013年春までに完成させ、こけら落としに全国菓子大博覧会を予定する。イベントや飲食物販の施設を設け、外野スタンドの一部は残す。広島商工会議所ビルは東側に移転・新築。将来は劇場建設も想定する。松井一実新市長は菓子博と球場解体は予定通りとする一方で、利用計画は見直しを表明。「若者中心のにぎわいの場」を基本方針に掲げた。

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