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援護法抜本見直し 被爆者らに厚労相表明

■記者 岡田浩平

 原爆症認定制度の課題解決について話し合う日本被団協、原爆症認定集団訴訟全国原告団、弁護団と長妻昭厚生労働相との初の定期協議が14日、厚労省で開かれた。長妻氏は被爆者援護法改正による制度の抜本見直しを急ぐ方針を表明。約7800人に上る認定の審査待ちの解消へ「審査処理計画」の早期策定も約束した。

 定期協議で、長妻氏は「法改正なしにこれ以上の認定基準の緩和は難しい」との認識を強調。援護法が病気と原爆放射線との関連(放射線起因性)を大前提にしている点に触れ「法律そのものを緩和する議論があってしかるべきだ」とし、速やかに素案を作る考えを示した。

 被団協側は認定制度自体の改定の必要性も認めつつも、まずは一昨年4月に緩めた現行基準を司法判断を踏まえてさらに緩和し認定を急ぐべきだと要望。法改正に向けては援護行政全体をにらんだ慎重な協議を求めた。

 長妻氏は「審査処理計画」の策定の意向を示し、申請者の不安に応え、審査の途中経過など情報開示に積極的に取り組む考えを明らかにした。一方、審査の加速へ被団協側が出した広島、長崎両市で有識者の審査会を開く案は否定した。

 政府側は長妻氏のほか長浜博行副大臣、山井和則政務官らが臨んだ。被爆者側は広島や長崎の原告、弁護士ら15人が出席したほか、約100人が傍聴した。次回は10月の予定。

 山本英典全国原告団長(76)は「早速いくつかの課題で方向性が示されてうれしい。今後も単に大臣が聞き置く場でなく実りある議論の場にしたい」と話した。


<解説>解決へ問われる本気度

 厚生労働相と日本被団協など原爆症認定集団訴訟の原告側との定期協議は、高齢化した被爆者に訴訟という多大な負担を強いることのないよう話し合いで認定制度の課題を解決していくのが狙いだ。

 「腹を割って話せる。援護行政の改善へ弾みのつく内容だった」。協議に臨んだ日本被団協の坪井直代表委員(広島県被団協理事長)は評価した。

 長妻昭厚労相は、認定審査加速への計画策定や情報開示を確約。制度の抜本見直しへ前政権では俎上(そじょう)に上らなかった被爆者援護法改正に踏み込んだ。その姿勢に、全国から詰めかけた被爆者たちが「変化」を感じ取ったに違いない。

 席上、被団協の田中熙巳(てるみ)事務局長はこの春で7年になる集団訴訟を「高齢化した被爆者にとって耐え難かった」と打ち明けた。集団訴訟は終結に向かうが、審査の加速を国に求める訴訟がすでに起きている。山積した被爆者援護行政の諸課題をいかに速やかに解決していくか。新政権の本気度が問われるのはこれからだ。

(2010年1月15日朝刊掲載)

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