×

ニュース

弟しのぶ蚊追粉寄贈 被爆者 彦坂さん 福山市人権平和資料館に

■記者 野崎建一郎

 福山市多治米町の被爆者彦坂昭子さん(82)が15日、被爆した弟をハエから守るために使った「陸軍蚊追粉」を同市丸之内の市人権平和資料館に寄贈した。資料館は同日から展示を始めた。

 戦時中、親せきから譲り受け、かばんに入れて持ち歩いていた約50グラム。彦坂さんがこの日、資料館を訪れて北村剛志副館長(69)に手渡した。

 彦坂さんは勤務先の造船所(現広島市中区)で被爆。蚊追粉は全身に熱線を浴びた弟の津山英毅さん=当時(14)=に群がるハエを追い払おうと、避難した河川敷でたいた残りという。

 英毅さんは翌朝に亡くなり、蚊追粉がしのぶ品になった。彦坂さんは「私が持っておくより、多くの人が原爆や戦争への関心を高める材料になれば」と寄贈を決めた。

 資料館は、非核をテーマにしたコーナーに、使用法などが記された蚊追粉の包装紙コピーや、彦坂さんの談話入りの案内板を添えて展示を始めた。北村副館長は「被爆体験を伝える貴重な資料。しっかり活用していきたい」と話していた。

(2010年1月16日朝刊掲載)

年別アーカイブ