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『地域と原発』 島根1号機 再開へ逆風 首相「寿命なら廃炉」

稼働37年 明確な基準求める

 稼働から37年がたつ中国電力島根原子力発電所1号機(松江市)の運転継続が困難となる可能性が出てきた。野田佳彦首相が「寿命が来た原発は廃炉」と発言したためだ。停止中の1号機について、中電は津波対策を進め40年を超す運転を計画。ただ国の方針次第では、計画見直しを余儀なくされる。

 島根原発の海沿いにクレーンが並び、作業員約260人が防波壁のかさ上げ工事に当たる。「海面から15メートルの壁を造り、津波に対する信頼性を向上させる」と川本秀夫副所長。2年後に全長約1・5キロの壁が完成する。

 福島第1原発の事故を受け、中電は島根1号機を含め安全対策を進める。ポンプに浸水防止の壁を設け、タービン建物も防水対策を施した。だが、津波対策が済んでも停止中の1号機の再稼働は見えない。建設から長い年月を経た高経年化原発に、政府が厳しい見方を示しているためだ。

「40年」の可能性

 野田首相は「寿命が来た原発は廃炉」と発言。細野豪志環境相兼原発事故担当相も「(運転開始から)40年は一つのラインになる可能性がある」と述べた。島根1号機は間もなく、そのラインに達する。

 島根県の溝口善兵衛知事は高経年化した原発の廃炉について「具体的な考え方とその根拠を示してほしい」と国に求める。事故が起きた福島第1原発と島根1号機の原子炉格納容器は同型で、島根原発増設反対運動の芦原康江代表は「真っ先に廃炉にすべき原発の一つ」と訴える。

 逆風は全国的にも強まる。福井県も、運転開始から来年で40年を迎える関西電力美浜原発2号機に関連して、高経年化の明確な基準を国に求めている。

 中電は、技術的には60年運転も問題ないとの姿勢を維持。苅田知英社長は「安全であることを確かめ、運転を継続するのが大前提。現状では廃炉の計画はない」と話す。

設備投資 難題に

 島根1号機は昨年3月に運転を止め、停止期間は最長の1年半。原子炉内の配管にひびが見つかり今月、取り換え作業に着手した。完了は12月の見通しで、国のストレステストも受ける。

 寿命の基準が約40年とされた場合、1号機の長くはない運転期間に巨額の設備投資ができるか、という問題も中電に生じる。中部電力が浜岡原発2基の廃炉を決めたのは、耐震性強化に約3千億円が見積もられたためだ。

 国の判断、地元の同意、将来へのコスト。多くの不確定な要素を抱え、島根1号機の停止は長期化が予想される。

島根原発1号機

 松江市鹿島町にあり、1974年3月に国産第1号の原発として運転を開始。沸騰水型の軽水炉で出力は46万キロワット。昨年3月、点検不備問題を受けて運転を停止。同11月にそのまま定期検査に入った。再稼働のめどは立っていない。(山本和明、樋口浩二、明知隼二)

(2011年9月16日朝刊掲載)

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