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新エネ・省エネ最前線 東広島の挑戦 <中> 雨水冷房

 天井に設置した装置が室内に冷気を送る。見た目はエアコンだが、冷媒はガスではなく雨水である。東広島市の近畿大工学部で2008年から実験する建築学科の市川尚紀講師(40)は「電力使用量はエアコンの約5分の1。大幅な節電になる」と力を込める。

 冷房システムの心臓部は、地下に埋め込んだ高さ約5メートル、直径約0・6メートルのドラム缶。雨水を配管で缶に送る。缶内の最深部の水温は地中熱と同じ15~18度になる。冷えた雨水をポンプと配管で室内の装置にくみ上げ、ファンで冷気を広げる。水はドラム缶に戻して循環させる。

 真夏日に9畳の部屋の室温を25度まで下げることに成功した。実験を進める建築学科4年の犀川徹さん(21)は「雨水を使えば、少ない電力で冷房できることを実証できた」と手応えを示す。

 課題は冷房の継続性だ。冷媒の水が再び冷えるまで数日かかるという。8月末、1個だったドラム缶を5個に増やし、常に冷えた水を流す試みを始めた。

 エアコンは家庭の消費電力の約3割を占めるとされる。地下の温度を冷暖房に利用する地中熱システムは、電力消費や二酸化炭素の排出を抑える技術として注目を集めている。

 ただ、今は地中に長い配管を埋める工法が主流で、300万~400万円程度かかる点などがネックとなっている。雨水利用なら低価格化が期待できる。市川講師は「手軽な工法で地中熱システムの普及に弾みをつけたい」と話す。

 「住宅設備メーカーなどと共同研究に踏み出し、実用化したい」と市川講師。地中には膨大な熱エネルギーが眠る。産学の英知を結集し、主要な自然エネルギーとして活用する道を開きたいと意気込んでいる。(山田祐)

(2011年9月16日朝刊掲載)

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