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連載・特集

基地とまち 2012岩国市長選 <上> 愛宕山売却

米軍住宅化 根強い反発

運動施設 管理権なく

 岩国市長選が22日告示29日投開票される。米海兵隊岩国基地への空母艦載機移駐が2014年に迫る中、移駐に協力姿勢の現職福田良彦氏(41)、反対の元市長井原勝介氏(61)、市民団体事務局長吉岡光則氏(65)の3氏がいずれも無所属での立候補を表明している。市長選を前に基地のまちの現状を見た。

 愛宕山の北側に1995年開設された山口県住宅供給公社岩国事務所。鉄骨2階建て事務所には、かつての愛宕山地域開発事業の完成予想図が今も飾られていた。緑に囲まれた高台に1500戸が並ぶ計画は07年に中止されて久しい。

 事務所は98年に始まった愛宕山開発を指揮してきた。事業中止後は跡地の維持管理を担い、最大25人いた職員も現在は8人。約169億円で跡地約100ヘクタールのうち約75ヘクタールを国へ売却することを決めた市、県の方針を受け、公社は3月に解散、事務所は取り壊される。

艦載機の受け皿

 跡地の地権者が「地域の発展につながるなら」などと協力した夢の住宅地は、空母艦載機移駐の受け皿に姿を変えようとしている。「愛宕山に米軍住宅はいりません」。事務所敷地近くで揺れるのぼりが、反対派住民の根強い反発を物語る。

 市長の福田氏は跡地の米軍住宅化について国から本格的な運動施設建設というメリットも引き出した。野球場、ソフトボール場、400メートルトラック、サッカー場のほか、テニス、バスケット、バレーの各コートも造られる予定だ。高校野球の公式戦を他市で実施する同市のスポーツ団体は「100年に一度のチャンス」と歓迎する。

 だが、いずれも米軍施設であるため管理権は米軍。市は昨年11月の住民説明会で「運動施設は身分証明書の提示などなく、フリーパス」「(既存の)市の体育館と同じ使い方ができる」などと強調。神奈川県逗子市などの例を挙げ、「利便性について不自由はないと聞いている」と不安の払拭(ふっしょく)に努めるが、市民がどれだけ自由に使えるかはまだ不透明だ。

先行移駐認めず

 米軍普天間飛行場(沖縄県)問題が解決しない中、在日米軍再編は岩国のみ着々と準備が進む。福田氏は昨年11月の市議会で「米軍住宅建設は艦載機移駐の準備行為として認めざるを得ない」と答弁。同時に二井関成知事とともに「普天間の見通しが立たない間、岩国への先行移駐は認めない」との従来の姿勢を保つ。矛盾を指摘する声もあるが、移駐容認派の市議は「現実的な対応で進んでいる。いい判断」と受け止める。

 一方、跡地売却を井原氏は「最悪の選択」として福田氏を批判。跡地への企業誘致や太陽光発電基地として活用すべきだと訴える。吉岡氏も「基地拡大につながる」と反対。市民と相談し、市の財産として運動施設や住宅用地など利用法を探るとしている。(大村隆)

(2012年1月11日朝刊掲載)

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