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連載・特集

基地とまち 2012岩国市長選 <中> 負担の見返り

補助・交付金 生活下支え

依存に懸念の声も

 米海兵隊岩国基地から北約1キロ。岩国市昭和町の東供用会館が約40年ぶりの大規模リニューアルを終えた。市が3700万円かけ、昨年3月から7カ月で耐震補強工事をした。鉄筋造りの建物は身障者用トイレやスライド式ドアなどでバリアフリー化され、内壁の強度もアップ。改修後のいま、住民がダンス教室などで活用する。

整備の状況に差

 供用会館は、航空機騒音の緩和のために国の補助金で市が建てた施設を指す。市内に36館ある。供用会館整備事業は事業費の最大75%まで国の補助金が利用できる。

 1981年の改正建築基準法より以前の基準で建てられた16館のうち9館の1次診断を2011年度に実施。必要と判断されれば順次、補強工事に入る。東供用会館を含め5館を改修した。

 供用会館は実質的には公民館と同じ役割の存在。だが、基地関連の国の財源を使えるかどうかで、整備の状況に差が出ている。  公民館は市内に全部で19ある。しかし、81年以前の15館のうち美川を除く14館は耐震診断さえこれからだ。いずれも住民が利用し、立候補予定者もミニ集会などで使う施設だ。

 「市内はほとんど何かしら、基地の金でできている」と市幹部。主な財源の一つは「防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律」の適用を受けた防衛省の補助金など。

 供用会館の財源はこれで、もう一つが在日米軍再編協力への「見返り」として、07年度受給分から18年度までに総額134億円が見込まれる米軍再編交付金だ。

耐震工事に充当

 これらを含め市が補助などの制度ができて以降、10年度までに防衛省から受けた基地関連財源は計1033億4400万円。市庁舎など施設整備や医療費助成事業などに使い、11年度予算でも市立小中学校の耐震化、子育て支援事業などに充てた。基地関連予算が暮らしの下支えになっていることは否めない。

 前回市長選で「子育て日本一」を掲げて当選した現職福田良彦氏(41)は、再編交付金を子育て支援に充て、小学生までの医療費無料化などを実施。今回はその実績を強調し、事業継続を訴える。

 元職井原勝介氏(61)は「再編交付金は基地拡大と引き換え。頼るつもりはない」。ただ医療費無料化については評価しており「防衛省に頼らず、財源を捻出して継続する」と強調する。

 新人の吉岡光則氏(65)も「基地頼みのまちづくりは麻薬のようなもの」と再編交付金に批判姿勢を示す。基地のない自治体でも同様の政策を実現しているとし「基地依存からの脱却」を掲げる。(堀晋也)

<岩国市の各事業に占める基地関連財源の充当例>

補助金など 愛宕地区排水施設改修             2500万円
        供用会館整備                   2500万円
        ごみ焼却処理施設建設(地質調査など)   730万円
        市道改良(昭和町藤生線と楠中津線)    1400万円
        下水道施設整備                 9900万円
再編交付金 障害児等総合療育施設整備         2億1400万円
        学校施設等耐震化基金積立金        4000万円
        市立小中学校耐震化推進           5500万円
        愛宕山まちづくり基盤整備           2億7600万円
        川下旭運動広場整備              2億3800万円

※2011年度当初予算ベースのため補正による増減額あり

米軍再編交付金
 米軍再編推進法に基づき、国が対象となる市町を指定し、在日米軍再編への協力の度合いや再編の進捗(しんちょく)に応じて支給する。岩国市は2007年度分から受給。現在は、工事着工の段階として年約11億100万円(66・7%)を受け取っている。14年に空母艦載機が移転予定で、再編実施段階の15・16年度は100%の年約16億5200万円を受給。市は、18年度までの総額を134億9200万円と試算している。

(2012年1月12日朝刊掲載)

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