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連載・特集

島根原発38年 <上> 寿命

「老朽化」 再稼働見通せず

「原則40年」の国方針で岐路

 中国電力の島根原子力発電所1号機(松江市鹿島町)が運転開始から丸38年を迎えた。停止期間は31日に丸2年となり、再稼働の見通しは立たない。政府が原発の運転を原則40年とする方針を示し、1号機は大きな岐路を迎えている。

高いハードル

 1号機の原子炉建物に入り、原子炉圧力容器そばの通路を進む。定期検査中にもかかわらず、行き交う作業員はまばらだ。検査中はピーク時で1日千人以上が出入りする。原子炉内の冷却水を循環させる配管にひびが見つかった問題も取り換えを終え、主な作業が完了しているためだ。

 再稼働へ、準備は進むがハードルは高い。「科学技術の進歩が反映されていない部分がある」と島根県の溝口善兵衛知事。38年を経た原発へ、地元は厳しい視線を向ける。

 原発は取り換えが可能な機器は更新していくが、原子炉圧力容器など交換が難しい機器もある。中電は2003年、島根1号機が60年運転しても問題はないと評価した。しかし、福島第1原発事故を受け「老朽化」の懸念が浮上している。

 例えば燃料が入る圧力容器。九州電力の玄海原発1号機(佐賀県玄海町)は、容器が中性子を浴びて想定以上に劣化している可能性が指摘されている。同原発は島根1号機の約1年半後に稼働した。

 圧力容器は鋼製だが、中性子を浴びるともろくなる。島根1号機では同じ材料の試験片を容器内に入れ、定期的に劣化がないか調べている。中電は、沸騰水型の島根原発は玄海原発などの加圧水型と違い、「中性子の量が少ない」とする。

破損 懸念の声

 島根1号機の原子炉の型に「課題がある」とする見方もある。福島第1原発と同じ「マーク1」と呼ばれ、1960年代に米ゼネラル・エレクトリックが開発した。フラスコ形で格納容器が小さい。圧力や地震で破損しやすいのではないか、といった指摘がある。

 島根原発増設反対運動の芦原康江代表はマーク1について「米国の設計者にも耐震性の危険を指摘する声がある。島根原発周辺には宍道断層などの活断層があり、安全は全く担保されていない」と強調する。これに対し、中電は「耐震上、問題ないことを確認している」と説明する。

 原則40年の「寿命」まで、島根1号機は残り2年を切った。ただ例外的に運転の20年延長を認める方針もあり、苅田知英社長は「気持ちとしては40年を超えて運転したい」と述べる。

 国は現時点で、原発の寿命を定める科学的な根拠を示していない。40年以上の運転を目指すのなら、まず国が明確な根拠を示し、その上で中電が地元への説明を尽くす必要がある。(山本和明、樋口浩二)


≪島根原発1号機≫
 1974年3月に国産第1号の原発として運転を開始。沸騰水型の軽水炉で出力は46万キロワット。2010年3月31日、点検不備問題を受けて運転を停止した。同11月にそのまま定期検査に入った。

(2012年4月1日朝刊掲載)

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