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連載・特集

『生きて』 広島女学院理事長 黒瀬真一郎さん <1> 出会い

平和と教育の道つなぐ

 広島女学院理事長・院長の黒瀬真一郎さん(71)=広島市東区=は広島女学院中高(中区)で長年、英語教諭を務め、平和教育にも力を注いできた。2005年には広島で「世界へおくる平和のメッセージ」と題したイベントを開催。出演した聖路加国際病院(東京)の日野原重明理事長たちと親交を紡ぐ。広島の教育と平和活動に地道に貢献している。

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 私の歩みは、波瀾(はらん)万丈でもドラマチックでもありません。出会いに導かれ、支えられてきたのです。小中高時代の恩師や、初めて教壇に立った山陽高の教え子…。朝鮮半島から戦後、引き揚げてきた妻禎子(ていこ)との暮らしも、私の価値観を大きく変えました。

 女学院に来てからは、「広島折鶴の会」世話人で、原爆の子の像の清掃を40年以上も続けた被爆者の故河本一郎さんと知り合い、大きな影響を受けました。振り返ると、それら一つ一つの出会いが全てつながり、大きな学びになっています。

 1977年には、被爆体験手記集「夏雲」を英訳して教材に使った。95年、女学院中高の校長時代には「国際高校生サミット」を開いた。これらの活動が評価され、2002年には文部科学大臣表彰(教育者表彰)を受けた

 被爆者でなければ平和について語れないわけではないのです。その体験を伝えることができるのが、人間のすごさだと思います。

 広島女学院では350人の生徒が原爆の犠牲になりました。その事実と命の尊さを次世代に伝える役割は先輩の先生方からのミッションであり、できることをしてきました。

 「世界へおくる平和のメッセージ」をはじめ、これまでに数多くの行事に関わってきた。しかも、黒子に徹してきた。教え子にとどまらず、そうした姿勢を慕う人は多い

 私はみんなを引っ張るタイプではありません。ただ、人と人をつなぐ役割をしてきただけ。みんなが持っている力を出しながら、足りないところをカバーし合ってきたのです。振り返ってみれば、私自身が支えられてきたのです。(里田明美)

(2012年4月17日朝刊掲載)

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