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「黒い雨」範囲3倍か 広島市と県 1844人体験分析

■記者 東海右佐衛門直柄

 広島に原爆が投下された直後の「黒い雨」の降雨地域が、これまで国が示していた範囲の約3倍に及ぶ可能性があることが25日、広島市と広島県の調査で分かった。市は、黒い雨の「大雨地域」を対象とする被爆者援護法の健康診断特例区域の指定拡大に向け、国への要望に役立てる。

 調査は2008年6~11月、被爆者、黒い雨の体験者を中心とする市内と周辺の3万6614人を対象に実施。調査用紙に記入、返送してもらった。有効回答2万7147人のうち、黒い雨の降雨時間や場所を記した1844人のデータを分析してきた。

 その結果をみると、黒い雨は原爆投下直後の午前8時台から広島市西部で降り始め、同10時台には最も広範囲に及んだ。体験者の分布エリアは、最北が旧都谷村(北広島町)▽最西は旧砂谷村(佐伯区湯来町)や旧廿日市町(廿日市市)▽最東は旧三田村(安佐北区白木町)―となった。

 1945年の調査に基づく「大雨地域」に比べて6倍程度、「小雨地域」を含めても約3倍の広さである。さらに降雨量についても新たな可能性が浮上。爆心地から北西約20キロにあり、一部が小雨地域とされている旧水内村(湯来町)で、4時間以上降ったとの回答を得た。

 健康被害では、黒い雨の体験者で「下痢や脱毛などがあった」と回答した人は大雨地域で16%、同地域外で10%。被爆や黒い雨を体験していない人の水準(3%)を上回った。

 調査結果は、市原子爆弾被爆実態調査研究会(市、県、研究者で構成)が、25日の会合で報告した。座長を務める広島大原爆放射線医科学研究所の神谷研二所長は「これまでにない大規模な調査であり、実態解明に役立つ」と説明。3月末までに最終報告書をまとめる。

黒い雨
 原爆投下直後に降った放射性降下物を含むとされる雨。1945年、広島管区気象台の気象技師が住民118人に聞き取り、降雨地域を調べた。国は1976年、爆心地から北西方向に広がる楕円(だえん)形のエリア(南北約19キロ、東西約11キロ)を大雨地域とし、被爆者援護法に基づき健康診断などが受けられる「健康診断特例区域」に指定。爆心地から北西方向の南北約29キロ、東西約15キロで大雨地域を除く一帯は小雨地域とし、特例区域に入れなかった。

(2010年1月26日朝刊掲載)

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