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連載・特集

グラフ特集 硫黄島に響く爆音

 空気を切り裂くようなごう音と振動を体感した。16日、本州から南に約1200キロの太平洋に浮かぶ東京都の硫黄島で、米軍の空母艦載機部隊の陸上空母離着陸訓練(FCLP)を視察した。(写真と文・金刺大五)

 在日米海軍司令部が報道陣に公開。米海兵隊岩国基地(岩国市)は日没後の夜間離着陸訓練(NLP)の予備施設に指定されている。県や岩国市など2市2町でつくる協議会は4月、硫黄島で訓練を完了するよう米側に要請。今後の指定にも反対している。

 硫黄島へは米海軍厚木基地(神奈川県)から出発。在日米軍再編では、同基地の艦載機59機を2014年までに岩国基地へ移転する計画だ。乗り込んだ輸送機の窓から駐機場に整然と並ぶ艦載機、FA18スーパーホーネットの姿が見えた。

 約2時間で島に到着。島の滑走路を空母の甲板に見立て、艦載機の車輪が地面に着いた直後に離陸する「タッチ・アンド・ゴー」を滑走路脇で見学した。1分程度の間隔でFA18が時速200キロで次々と突っ込む。耳栓なしでは耐えられない爆音が響いた。

 飛行パターンや高度維持をパイロットの体に覚えさせる訓練。「空母への着艦は高い危険性が伴う。陸上での十分な訓練が必要だ」と在日米海軍司令部作戦部長のデニス・ミケスカ大佐(52)。島の周囲に緊急着陸できる滑走路がなく、本土側への訓練施設の移転の必要性も強調した。夜間の訓練も公開したが、霧のため5分程度で中断された。

 太平洋戦争末期に激戦地となった硫黄島。周囲22キロの島内には碑や戦争遺跡が点在する。島全体を望める摺鉢山の頂上には米国側の記念碑と日本側の慰霊碑が数十メートル離れ、並んでいた。

硫黄島の訓練施設
 米軍が1991年度から陸上空母離着陸訓練(FCLP)の暫定施設として使用している。滑走路は1本で全長2650メートル、幅60メートル。着艦の想定ルート内に4~6機の艦載機が巡回し、訓練を繰り返す。日本政府はFCLPの移転先として、鹿児島県西之表市沖の無人島・馬毛島を候補に挙げているが、地元県市の反対が強い。一方、岩国基地とその近郊には防衛相、外相とも「整備する考えはない」としている。

(2012年5月29日朝刊掲載)

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