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連載・特集

復興の風 1958年 広島城 天守閣再生 活気を呼ぶ

工期5ヵ月 宮大工の技

 屋根は空に向かって反り返り、白壁は陽光に輝く。原爆の爆風に吹き飛ばされた広島城天守閣(広島市中区)は、再生した。

 見物客の長い列の頭上には、「広島復興大博覧会第3会場」の看板が掲げられている。完成した天守閣を呼び物の一つにした博覧会は、4、5月の50日間で87万人を集めた。

 最上階から見渡す太田川デルタにはまだ、いたるところに傷痕が残る一方、すでに市民球場や県庁の真新しい建築物が輝いていた。そんな復興の急ピッチに合わせるように、天守閣も工期わずか5カ月で建てられた。

 鉄筋の構造だが、外装の細工は広島県坂町の宮大工が仕上げた。工事の足場を組むとび職だった同町の新木正夫さん(88)は「城の再建で、職人も元気を取り戻した」と懐かしむ。「今では城より高いビルが、ようけえ並んどる。ようここまでになって」

 「自慢の天守閣」に家族と訪れるのが毎年の恒例行事だ。新木さんの耳には、職人たちの弾む声や道具を振るう音が今もよみがえる。(門脇正樹)

(2012年7月3日朝刊掲載)

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