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連載・特集

点検 山口県政 2012知事選を前に <下> 米海兵隊岩国基地

先行搬入 反対貫けるか

再編に協力 進む機能強化

 米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ12機を積んだ輸送船は1日、岩国市の岩国基地に向けて米本土を出港した。先行搬入した後、試験飛行などを経て米軍普天間飛行場(沖縄県)に配備する計画。24日にも基地内の岸壁に到着する見通しだ。

オスプレイ事故

 オスプレイは4月にモロッコ、6月には米フロリダ州で相次いで墜落事故を起こした。米政府は詳しい調査結果を日本政府にまだ示していない。なのに日米両政府は搬入を急ごうとする。地元にとって日本政府は住民の安全より日米同盟を重視していると映る。

 「なし崩し的に片を付けるような姑息(こそく)な考え方だ」。輸送船出港と同じ1日の山口県庁。森本敏防衛相の訪問を二井関成知事は批判し、先行搬入を強く拒否した。

 在日米軍再編に伴い、2014年までに米海軍厚木基地(神奈川県)の空母艦載機59機の移転が予定される岩国基地。再編に協力、反対両派ともオスプレイの先行搬入に反対した二井知事の姿勢を支持する。

 再編に協力姿勢の岩国市議でつくる「岩国基地問題に関する議員連盟」の桑原敏幸会長(64)は「国防のために市民が担う負担を国にもっと訴えてほしい」と注文。基地の航空機騒音被害の賠償などを国に請求している岩国爆音訴訟の津田利明原告団長(66)も「再編に協力的な知事にはこれまで同調できなかったが、今回は毅然(きぜん)とした態度を」と求める。

 ただ、オスプレイ配備は「航空機の機種変更」に当たり、日米安保条約に基づく事前協議の対象になっていない。日本政府や自治体に米軍の配備を拒否する法的権限はない。

 「国の基地政策については地元の考え方を尊重する」と、国と岩国市との間で調整役を務めてきた二井県政。その16年間の歴史は、艦載機移転の呼び水になった滑走路沖合移設など、岩国基地が歩んできた機能強化の道と重なる。

 ニュータウン予定地で多額の負債を抱えていた愛宕山地域開発事業跡地(岩国市)も、国の米軍住宅用地としての要請を受けて3月末に売り渡した。

来月に調査結果

 オスプレイ沖縄配備のプロセスで岩国基地への先行搬入が生み出された底流を、「政府に軽く見られていたから」と基地監視団体「リムピース」共同代表の田村順玄岩国市議(66)はみる。「県と市は国防に協力的な姿勢を取ってきた。しかも岩国錦帯橋空港(愛称)の12月開港というアメを政府からもらっている」が理由だ。

 米政府は岩国基地に機体を搬入後に実施するとしていたオスプレイの試験飛行を、安全性が確認されるまでの間、見合わせるとした。その節目は、墜落事故の追加的な調査結果を日本政府に提供する8月中。日本政府がどう結果を分析し、県が地元にどういう言葉で伝えるか、が問われる。二井知事の任期は8月21日まで。新しいリーダーが難題を引き継ぐ。(酒井亨)

(2012年7月6日朝刊掲載)

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