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連載・特集

『生きて』 漫画「はだしのゲン」の作者 中沢啓治さん <14> 「ゲン」世界へ

翻訳や映画・演劇で訴え

 「はだしのゲン」の英語版第1巻が1978年に完成した

 20以上の言語に訳されてるんじゃないかな。ゲンははだしで世界中を駆け回ってるんですよ。14カ国語まで出版されていて、英語やロシア語、タイ語は全巻ある。

 訳すのは、留学生やボランティア。ドイツ語は、ドイツラジオの日本支社の日本人女性が「ぜひドイツ語に」と言って訳した。そこのドイツ人の支社長がベッドに寝転がって読んでたら、だんだん起き上がって最後は正座してわんわん泣いた、って。「漫画を読んでこんなに泣いたことない」と。やっぱり効果あるな、と思ったね。

 漫画は今、世界の文化になっている。これからも、いろんな言葉で描かれるといい。

 76年に劇映画、83年にはアニメ映画化された

 劇映画で一つ注文したのは、ゲンのおやじに三国連太郎さんを使ってくれ、というだけ。風貌が似ているんよ。それ以外はタッチしなかった。でも、あれはいかん。劇映画の持つ面白さとか、もっとやり方があると思うんだけど、意に反していた。だから、アニメで表現するしかないかな、と。

 アニメは、僕が1週間でシナリオを書いて、みんなに見せて、オーケーということでスタートを切った。いい出来ですよ。

 ほかにも、演劇やオペラ、ミュージカルなど国内外でさまざまな形で表現されている

 ゲンは自由自在に駆けずり回ってくれればいい。あっち行き、こっち行き、ゲンの精神を広めてくれれば、作者冥利(みょうり)に尽きる。

 確かに、ここを突っ込んでほしいとか、ここが一番大事なんだ、というのがぼけたりしてイライラはある。けど、僕の手を離れて演劇という世界で生きている。それでよしとせんといかんと決めた。多くの人が見て感じてくれれば、ゲンの役目は果たせるからね。

 広島市教委の新たな平和教育プログラムにも使われている

 漫画も使いようによっては、いい参考資料になる。「やっと認めたか」ということですよ。

(2012年7月25日朝刊掲載)

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