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「黒い雨」放射性物質 特例区域外で検出 星教授ら 

■記者 東海右佐衛門直柄

 広島大原爆放射線医科学研究所の星正治教授のグループは1日、原爆投下直後の広島に降った「黒い雨」に由来するとみられる放射性物質を、爆心地の北約8キロの民家の床下から検出したと発表した。民家は、黒い雨の「大雨地域」を対象とする健康診断特例区域から外れている。星教授は「区域拡大に向けた科学的な根拠になる」としている。

 調査は、爆心地から約30キロの範囲を対象に昨年2月に着手。戦後の核実験の影響が少ない1945~49年に建てられた民家の床下の土壌に、核分裂生成物セシウム137があるかどうかを調べている。既に市内15カ所の土壌を採取し、7カ所の解析を終えた。

 その結果、爆心地の北約8キロで大雨地域外の旧安村(安佐南区相田)▽同北西約7キロで大雨地域内の旧伴村(同区沼田町伴)―の2カ所からセシウム137を検出。星教授は京都大原子炉実験所(大阪府)の協力を得て3月までに当時の放射線線量を推計し、身体への影響を探る。

 黒い雨をめぐっては、旧厚生省は爆心地から30キロまでの土壌の調査結果を1976年に公表したが、旧ソ連や中国などの核実験の放射性降下物の影響によって降雨域は特定できないとした。

 一方、広島大などの研究者が1996年、大雨地域外の旧市内3地点からセシウム137を検出したと発表した。日本軍の調査団が被爆直後に爆心地から半径5キロ以内の約30地点で採取、1992年に市が返還を受けた土壌を測定した結果だった。

 星教授は今回、1996年の測定よりもさらに爆心地から遠い場所で検出に成功した。今後は調査地点を増やして降雨エリアの全体像を把握し、2011年度中の最終解析を目指す。協力する広島市は、被爆者援護法に基づく健康診断特例区域拡大に向けた国との協議に役立てる方針だ。

黒い雨
 原爆投下直後に降った放射性降下物を含むとされる雨。国は1976年、爆心地から北西方向に広がる楕円(だえん)形のエリア(南北約19キロ、東西約11キロ)を大雨地域とし、健康診断特例区域に指定。爆心地から北西方向の南北約29キロ、東西約15キロで大雨地域を除く一帯は小雨地域とし、特例区域に入れなかった。

(2010年2月2日朝刊掲載)

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