×

連載・特集

平和大通り―復興の軌跡 <4> 対なす橋

日常の中 ヒロシマの心

 「ここからの眺めが好きだ。狭い歩道は夫婦で並んでは歩きにくいけど」。広島市中区の会社員加藤木(かとうぎ)大志さん(28)は妻由紀さん(30)と、平和大通りの平和大橋で夕涼みを楽しむ。元安川上流を望むと輝く原爆ドーム。観光客も足を止める「絶景スポット」だ。

 平和大橋(長さ85・5メートル)と、西側の本川に架かる西平和大橋(同101・9メートル)は対をなす。世界的彫刻家の故イサム・ノグチ氏がデザインした。欄干は、平和大橋が「太陽」、西平和大橋は原爆犠牲者を黄泉(よみ)の国へ運ぶ船の竜骨をイメージした。

 平和大橋の歩道の幅は1・8メートルと狭い。市は上流側に歩道橋の建設を計画。2008年度に開いたデザイン案の国際コンペでは、国内を含む計7カ国から29社の参加があった。

 被爆地にある巨匠の作品を補う橋のデザインを手掛けることは、それほど魅力的に映った。広島の日常の風景は至るところに、平和のメッセージが込められている。

 歩道橋計画は、近くの市道を一部廃止する市の提案に町内会が反対し、ストップしている。それでも世界が認める橋の価値は変わることがない。(写真・荒木肇、文・松尾直明)

(2012年7月27日夕刊掲載)

年別アーカイブ