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「はだしのゲン」未完の第2部 中沢さん 資料館に原画寄贈へ

■記者 東海右佐衛門直柄

 被爆後の広島で力強く生きる少年を描いた漫画「はだしのゲン」の作者中沢啓治さん(70)=埼玉県所沢市=が、未完のまま執筆を断念したゲン第2部の原画を、寄贈先の原爆資料館(広島市中区)に近く届ける。中沢さんは「核兵器廃絶を願うゲンの思いを子どもたちに読み継いでもらいたい」と願う。

 「はだしのゲン第2部東京編」は2002年ごろから5年程度、月刊誌に連載を予定していた。しかし、第1話の執筆中に白内障が悪化し中断。一切公開されないまま「幻の作品」となり、原画は中沢さんが広島市内に所有するマンションで保管していた。

 第1話全16ページのうち、作画中の状態で現存するのが3ページ目。ゲンが列車で東京駅に着き、座席で背伸びをしながら「体がメリメリ言うとるわい」と街を眺める場面を鉛筆で描いている。表紙となる1ページ目は空白、2ページ目は紛失したという。

 4~16ページはこま割りをし、せりふを書き込んだ段階。東京駅の理髪店でゲンが「ピカでひどい目におうたよ」と告げると理容師に「帰れ、この店から出て行け」「原爆を受けた者に近づくと放射能がうつる」と言われ、「くそったれ」と悔しがるシーンなどだ。

 2話以降はゲンが東京大空襲の被害を知り戦争の無益さを実感、被爆者への偏見を乗り越え、画家を目指しフランスに修業へ出かける構想だった。「夢へ向かって羽ばたく希望あふれるラスト」を予定したという。

 中沢さんは糖尿病と右目の白内障の悪化により昨年9月に漫画家引退を表明した。自作の全原画や関連資料の原爆資料館への寄贈を決め、所沢市の自宅で保管していた他の作品は既に資料館に送っていた。

(2010年2月5日朝刊掲載)

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