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連載・特集

カザフ核実験の健康被害 セメイ国立医科大 チャジュノソワ教授に聞く

2、3世への影響も深刻

補償や医療 充実必要

 旧ソ連時代に繰り返された核実験で多くの被曝(ひばく)者を生んだカザフスタン。がんや心臓病などに今も苦しんでおり、健康被害は2世や3世にも広がっている。小児科医師として治療を続けるセメイ国立医科大(旧セメイ医学アカデミー)教授のナイラ・チャジュノソワさん(60)に、現状や課題を聞いた。(増田咲子)

 ―被曝者の現状は。
 450回を超す核実験が行われたため、心臓病に次いで、がんが多い。2、3世への影響も深刻だ。先天的な障害があり生まれてきた患者も多く診てきた。心臓の異常、腕がない、皮膚がん、骨が軟らかすぎて立てない、といった障害だ。何としても助けたい。

 セミパラチンスク核実験場は20年以上前に閉鎖されたが、その後も障害がある子どもが生まれている。核実験の被害者は、2世や3世を含めて約150万人いるが、これからも増えていくと思う。遺伝的影響の研究もさらに進めたい。

 ―1992年、セミパラチンスク核実験場の周辺住民を救済する法律ができ、国も対策に乗り出しています。
 国から、被曝者への補償金が与えられている。支給額は、住んでいた場所や期間などに応じて決められている。もっと増やすべきではないかと思う。

 今後、被曝者のための病院を増やすと同時に、質も向上させなければならない。病気を早期に発見できる診断や治療のシステムを確立し、医師の技術もレベルアップさせなければならない。

 ―被爆地広島ができることはありますか。
 長年、医療・学術面や民間での交流を続けてきた。広島の医師が被曝者の検診などをしてくれ、大きな成果を得ている。今夏、広島の医師や研究者を医科大に招き、最新の医学や放射線についての集中講義が初めて実現した。今後も、セメイの医師育成のため、公開手術を実施するなどさらに協力を仰ぎたい。

セメイ国立医科大 チャジュノソワ教授
 52年セメイ(旧セミパラチンスク)市生まれ。第1医科大(現モスクワ医学アカデミー)卒。小児科医師。94年7月から1年間、広島大原爆放射線医科学研究所(原医研)の外国人研究員。11年10月、カザフスタン放射線医学環境研究所(セメイ市)副所長からセメイ国立医科大教授に就任。

(2012年9月11日朝刊掲載)

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