×

連載・特集

島根原発 2012年回顧

3号機 建設続行に批判

避難計画は課題山積み

 中国電力島根原子力発電所(松江市鹿島町)の海辺に、真新しいコンクリート製の建物が立つ。ほぼ完成し燃料装填(そうてん)に必要な検査を終えた3号機だ。

 福島第1原発事故を受け、稼働時期は未定となっていた。だが9月、政府が建設続行の容認を表明。福島の事故以来、全国で初めて新規稼働の可能性がある原発となった。

 一方、政府はほぼ同時に原発の「2030年代ゼロ」と「寿命40年」の方針も発表。島根原発の地元から「3号機が動けば30年代ゼロと矛盾する」と住民の批判が相次いだ。

 同時に注目されたのが14年3月で運転40年を迎える1号機(定期検査で停止中)だ。9月に発足した原発の新たな規制組織、原子力規制委員会が安全審査を担うが、中電は「60年間の運転が可能」と主張。一方で「原子炉格納容器が福島第1原発と同型。水素爆発の危険性が高い」(島根原発増設反対運動の芦原康江代表)と、廃炉を望む声も根強い。

 ただ衆院選で、原発の稼働について「3年以内の結論」と先送りした自民党が圧勝。「寿命40年」路線の継承は流動的となった。

 「福島の惨劇を考えれば廃炉は当然」。市民団体「平和フォーラムしまね」(松江市)の杉谷肇代表は訴える。中電は「規制委が示す安全基準に従い、安全対策を取る」との姿勢を貫く。

 1月に定期検査に入った2号機とともに、両基とも停止した期間は約11カ月と最長を更新し続ける。13年は、7月以降とする規制委の安全審査の開始後に再稼働をめぐり、地元を二分する議論が巻き起こる可能性もある。

 一方、県は、原発30キロ圏約39万6千人の避難計画作りを本格化。11月には、県内と広島県など中国地方の4県70市町村から選んだ149施設に一時避難させる案を示した。

 ただ、社会福祉施設の入居者たち災害弱者の避難方法や渋滞対策など課題は山積。リスクが明白な中、稼働の判断について溝口善兵衛知事がどう民意を反映させるかが問われる。(樋口浩二)

(2012年12月21日朝刊掲載)

年別アーカイブ