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連載・特集

竹島問題 2012年回顧 

大統領上陸 関心高まる

提訴先送りに憤りの声

 日本海沖の離島が描かれた古い絵図やパネルに、老若男女が見入る。日韓両国が領有権を主張する隠岐の島町の竹島(韓国名・独島(トクト))に関連した資料を展示する竹島資料室(島根県松江市)だ。

 島根県庁第3分庁舎にある資料室には9~11月の3カ月間で、計1770人が訪れた。1日平均24・6人に上り、昨年同時期(6・8人)と比べ約3・6倍に急増した。

 背景には、8月の韓国トップとして初めてという李明博(イミョンバク)大統領による竹島上陸がある。県、国とも「日本固有の領土」とする竹島への突然の上陸。「全国ニュースで取り上げられ、結果的に竹島への関心が高まった」(県総務課)形となった。

 「長年問題を放置してきた」(県議会)政府は上陸後、国際司法裁判所への共同提訴を韓国に提案。1962年以来、50年ぶりのことだった。拒否はされたが、10月には単独提訴の検討にも入った。

 ただ、地元隠岐の島町民の思いは複雑だ。「どうしても今更、と思ってしまう」と漁業八幡昭三さん(84)。36~54年の18年間に父と兄、叔父がたびたび漁のため上陸したという竹島。問題解決への思いは人一倍で、地元漁協の組合長時代には地元選出の国会議員への陳情にも動いた。

 「関係改善の兆し」(政府高官)などを理由に、政府が単独提訴を先送りしたことには「今やらずして、いつやるのか」と憤る。

 問題は両国間の漁業問題にも及ぶ。あくまで竹島を自国領とする韓国は、両国が99年、日本海に設定した暫定水域で「ルールを無視した漁を繰り返している」(鳥取県沖合底曳網漁業協会)という。

 「韓国船が占拠している」(同協会)ため、浜田市沖の暫定水域では高単価のズワイガニ漁ができない状態が続く。ことし11月の両国漁業者間の交渉でも、進展はなかった。

 12月16日の衆院選島根1、2区で当選した両自民党前職は、竹島問題の解決を訴えた。与党の県選出議員として、近く新大統領に就任する朴槿恵(パククンヘ)氏率いる韓国政府との交渉進展に貢献できるか注目される。(樋口浩二)

(2012年12月22日朝刊掲載)

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