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連載・特集

安倍首相 本紙単独インタビュー 経済再生 期待に応える

 昨年12月の衆院選で自民党が政権奪還を果たし、5年3カ月ぶりに安倍晋三氏(山口4区)が首相にカムバックした。再登板は故吉田茂元首相以来64年ぶりで戦後2人目となる。消費税増税の可否、領土をめぐる問題で対立した中国、韓国との関係改善、環太平洋連携協定(TPP)交渉参加の是非、エネルギー政策など今年も課題は山積みだ。「危機突破内閣」のトップとしてのかじ取りを聞いた。聞き手は、中国新聞社の岡谷義則社長。(武河隆司、岡田浩平)

2度目の政権

要職に中国勢 意図せず

 ―先の衆院選で政権を奪還し、2度目の首相就任おめでとうございます。久しぶりに首相官邸の主として迎えるお正月ですが、今の率直なお気持ちを聞かせてください。
 前回は、あれよあれよという間に首相に就任した。事前に官房長官をやって首相になったわけだが、今回は野党から与党になった。そして、政権を奪還するという、自民党総裁としての使命を果たすことができた。

 なぜ選挙に勝つことができたか。民主党政権の3年3カ月の混乱に終止符を打てということが1点。もう1点は、経済が非常に厳しい状況になっている。長引くデフレ、そして円高という状況の中で、いくら頑張っても工場を閉鎖せざるを得ない、店を閉めざるを得ないという状況。これを変えろという国民の声だったと思う。

 責任は極めて重い。とにかく目の前の課題に挑戦し、結果を出していくことで国民の期待に応えていきたい。

 ―党、内閣ともに中国地方選出議員が要職を占めていますね。
 かつてうちのおやじ(安倍晋太郎氏)が総裁選に出た時に「安竹宮(安倍氏、竹下登氏、宮沢喜一氏)」の3人とも中国地方で、中国地方全盛時代と言われたが、今度も勢ぞろいした。

 山口県から私が首相で、副総裁が高村正彦さん(山口1区)、選対委員長が河村建夫さん(同3区)、農林水産相が林芳正さん(参院山口)。そして、幹事長が石破茂さん(鳥取1区)で、幹事長代行が細田博之さん(島根1区)、外相が岸田文雄さん(広島1区)。もちろん全く意図はしていないが、結果として人材を集めたら、中国地方に多かったということだ。

核廃絶と原発問題

上関は地元の考え尊重

  ―核軍縮に関して日本の果たすべき役割は大きいです。非核三原則や核兵器廃絶についての考えは。
 核の廃絶については今までも国連で日本がリーダーシップを取って決議をしている。この姿勢はみじんも揺るがない。

 核軍縮についてはいわば、現実に実際に、効果を上げていくということを考えなければいけない。その中において、国際的に核軍縮に進むよう、日本も被爆国として努力していきたい。非核三原則についてはそのまま堅持していく。

 岸田外相は自民党のホープ。日本の国益を守る、主張する外交、戦略的な外交を展開していただきたい。

  ―民主党が打ち出した「原発ゼロ」政策の見直しについても言及されています。中国電力が計画する上関原発(山口県上関町)にはどういうスタンスで臨みますか。
 民主党のように、希望をただちに実際の政策にするということはしない。それは極めて無責任な態度だ。特にエネルギー、電力は生活の糧でもある。安定的で安価な電力を供給できなければ、日本からものづくりが消えてしまう危機がある。

 確実に安定的な代替エネルギーを獲得できるという考えなしに原発をゼロにすると言えば、そもそも日本に投資する国はなくなる。経営者は当然、海外に出て行くことを検討するだろう。ただちに生活の場、働く場を失うことになる。民主党が目指す「2030年代原発ゼロ」というのは、今の段階で約束すべきでないと思っている。

 (東京電力福島第1原発の)過酷事故をみれば、できる限り原子力発電に対する依存を減らさなければいけないと思う。ゼロという目標が達成できればそれに越したことはないが、今それを断言できる状況には全くないし、それを言ってしまえば、技術者が供給されなくなる。廃炉に向けて(技術確保が)難しくなるし、使用済み核燃料をどうするのかということにも立ち向かえなくなる。

 電力需要への対応なども踏まえ、われわれは3年間で再稼働するかどうかを判断していく。同時に再生可能エネルギーに対して投資を行い、新たなイノベーションを促していく。こういう中において、10年間で電源のベストミックス(最適な組み合わせ)を構成したい。

 上関原発に関しては、地元として凍結という考え方なので、尊重していきたい。

  ―在日米軍の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの運用には、米海兵隊岩国基地(岩国市)も組み込まれます。住民には不安があるようですが。
 基本的に住民のみなさんの心配を払拭(ふっしょく)していくということは当然、必要だと思う。岩国の場合、発着は海側になる。万が一の事故が起こっても、住民に被害が及ぶことはないということは申し上げておきたい。

(2013年1月1日朝刊掲載)

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