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連載・特集

「トホホ福島日記」 ⑤ 知りたいのは安全か危険か

 福島第1原発事故による放射能汚染の現状を安全とみるか、危険とみるか。物言わぬ住民の関心は今も高い。「福島は安全です」という講演会に人が集まるかと思うと、「福島は危険です」という講演会にも人が集まる。

 ある日、これまで放射能汚染に無頓着だった実兄が、珍しく「線量計を貸してみろ」と言ってきた。彼は、日頃自分が歩く所だけを自分の腰の位置で測定。「低い」ことを確かめて安心して戻ってきた。いつも数値の高い所を探して歩く僕とは、全く違う行動を取ったのである。

 放射性物質は雨などで一部に自然濃縮しており、測定する場所によって値が大きく異なる。危険を知りたい人は危険を探し、安心したい人は安全を探す。

 事故をどう捉えるか。実際には非常に複雑だ。しかし、福島市は公には「安全」をうたう。街はまるで何事もなかったかのように日常が取り戻されている。僕はそのことに大きな危機感を覚えている。(漫画と文・福島市の高校美術教師 赤城修司さん)

(2012年5月8日朝刊掲載)

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