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連載・特集

「トホホ福島日記」 ⑩ 危機感 維持する難しさ

 6日からの3連休、福島市で祭りが相次いだ。例年通りの稲荷(いなり)神社の祭りに加え、「こでらんに博」「ぎょうざオリンピック」「こむこむ放射線講座」など、めじろ押しだ。街には山車が繰り出し、過去になかったようなにぎわいだ。僕の目には、まるで放射能の汚染に目をつぶって忘れようとムキになっているように見える。

 避難先の会津若松市の小学校に通う長女に、転校前の小学校の仲良しから「お祭りに行こう」とお誘いがあった。転校して避難しているのに、福島市内に遊びに行くのは矛盾している。出発直前になって僕は、大声を出してしまった。

 僕の対応は過敏で感情的なものだったと思う。それを受けた妻の対応も感情的なものだったろう。長引く避難生活で、感情を一定に維持することの難しさを感じている。

 晩発性の毒性を持つものに対して、危機感を維持し続けることは困難だ。放射能問題は、表すことや触れること自体が難しい。「福島の声が聞こえない」というのも、無理のないことだと僕は感じている。(漫画と文・福島市の高校美術教師 赤城修司さん)

(2012年10月16日朝刊掲載)

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