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連載・特集

「トホホ福島日記」 ⑬ 夫婦で違う「安心な場所」

 東日本大震災から682日が過ぎた。その混乱も随分落ち着いてきたように見える。少なくとも見た目は、福島市は平常通りの生活が営まれている。

 そんな中で、僕は相変わらず、福島市は子どもを育てるのに適した場所ではないと考えている。避難地区の境界線は、行政が予算との兼ね合いで引いたもので、僕自身が考える望ましい境界線とは大きく違っている。

 一方、妻は僕と違って、福島市は暮らすのに十分安心な場所だと思っている。緊急避難先の会津若松市から戻りたがっている。

 子どもの住民票を会津の実家に移してからは、617日がたった。わが家は何とか平常の生活を装いながらも、今後の家族計画に揺れている。

 ようやく4月の新年度からアパートを借りて実家を出る決心をしたものの、妻と僕の本心は違う。折に触れて夫婦は小さな衝突を繰り返している。その小さな衝突は、大みそかだろうと、正月だろうと休んでくれない。家族だんらんの中に不意にやってくる。(漫画と文・福島市の高校美術教師 赤城修司さん)

(2013年1月22日朝刊掲載)

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