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広島市予算案 7.3%増 10年度一般会計

■記者 長田浩昌

 広島市は9日、5916億3800万円の2010年度一般会計当初予算案を発表した。09年度当初比7.3%増と6年連続の増額編成。新たに始まる子ども手当支給や土地開発公社への無利子貸し付けで膨らみ、伸び率は1992年度以来の7%台となった。一方、市税収入は経済の停滞を反映し、過去3番目の減少幅を見込んだ。

 重点施策は、253億6300万円を盛り込んだ経済危機対策▽地球温暖化などに対応したライフスタイルの創造▽情報通信技術(ICT)先端都市の構築▽魅力ある「千客万来の広島」実現―4分野。2020年夏季五輪の招致検討では、模索している「単独開催」の基本計画づくりに着手する。

 JR山陽線とアストラムラインの乗り換え拠点となる白島新駅(仮称、中区西白島町)は2014年春開業に向け、実施設計に入る。

 記者会見で秋葉忠利市長は「厳しい財政状況の中にあっても、世界のモデル都市を目指した諸施策を着実に展開したい」と強調。夏季五輪については夏をめどに基本計画を公表し、年内には立候補するかどうかを判断する考えを示した。

 歳出では、扶助費は生活保護の増加や子ども手当の創設で22.1%増の1309億5500万円となった。普通建設事業費は広島特別支援学校の移転などで4.0%増の850億5千万円。

 一方、歳入は、市税が09年度当初を100億9500万円下回り、4.9%減の1958億9千万円。記録がある1964年度以降で94年度(6.2%減)99年度(5.8%減)に次ぐマイナス幅となる。企業収益の落ち込みで法人市民税が25.2%減の174億9800万円。個人市民税も給与減で7.7%減の660億9700万円を見込んだ。

 地方交付税は2.5%増の415億円。財源不足は臨時財政対策債など借金に当たる市債発行で補い、19.7%増の722億9700万円を計上した。特別、企業会計を合わせた予算案総額は0.9%増の1兆1473億2900万円。16日開会の市議会定例会に提案する。


暮らしや命に重点


■記者 東海右佐衛門直柄

 広島市が9日発表した2010年度当初予算案は、地域経済の停滞を踏まえた緊急経済対策、暮らしや教育、原爆平和などの各分野に施策を織り込んだ。アストラムラインとJR山陽線の乗り換え拠点となる新駅整備に向けた予算も計上。財政が厳しさを増す中、まちづくりへの積極的な取り組みも目立った。

原爆平和 「黒い雨」降雨域をシミュレーション

 原爆投下直後に降った「黒い雨」の降雨エリアを確認する気象シミュレーション調査に着手する。

 同様の調査は1988~90年度に県、市の専門家会議が実施し「大部分が(爆心地から)北北西3~9キロ付近に降下した」と、降雨エリアを国の健康診断特例区域内とする結果をまとめた。

 しかし、専門家から「気象計算モデルが古く、きのこ雲の高さも正確でない」との指摘が出た。このため、最新の気象シミュレーションとコンピューター解析を採用。2カ年で降雨域を推計し直し、健康診断特例区域の拡大を国に求める根拠にすることも想定する。

 2020核廃絶広島会議(仮称)を8月に広島国際会議場(中区)で開く。平和分野の国際的な非政府組織(NGO)メンバーや識者たち約300人の参加を予定。5月に米国で開催される核拡散防止条約(NPT)再検討会議の議論を受け、廃絶の動きを加速させる国際キャンペーン、NGOと有志国による条約づくりなどを協議する。

 世界中から届けられる折り鶴を長期保存・展示する「折り鶴ミュージアム(仮称)」に関する検討委員会も新設する。秋葉忠利市長の前回市長選(2007年)の公約の一つ。平和推進課は「規模や設置場所を検討する」としている。

原爆資料館 改修に着手

 原爆資料館(中区)の改修事業に着手する。基本設計費など1億1200万円を計上。2011年度の実施設計を経て、12~14年度に東館、14~16年度に本館と渡り廊下の工事を進める。概算総事業費は47億円。

 基本計画素案では、東館に1階から最上階の3階まで直通エスカレーターを新設し、見学を始める順路を変更。(1)映像や写真で原爆の実態を紹介する導入展示に触れる(2)本館に移り、悲惨さを伝える遺品を見学(3)東館に戻って復興の歩みを学ぶ―などの展示方法にリニューアルする。

 さらに、老朽化が進む本館の耐震化や、観覧後の感想を話し合ったり、手紙を書いたりする場所の新設を構想している。有識者たちでつくる検討委員会が素案に基づく計画原案を2月下旬に正式決定し、3月末までに市に報告する予定だ。

 資料館の本館は1955年、東館は1994年に開館。2008年度は、国内外から約135万人が訪れた。改修中も部分的な展示を続ける方針。改修は1988~93年度に続き2回目となる。

(2010年2月10日朝刊掲載)

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