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連載・特集

「トホホ福島日記」 ⑭ 片道80キロ行ったり来たり

 福島市の自宅から、福島県会津若松市の実家に子どもを自主避難させて3年目が近づいている。1年目は、私と妻は福島で働き、1日交代で会津に通った。車で片道80キロ。妻は「放射能じゃなくて、通勤ストレスで病気になる」と言った。

 2年目は、運よく妻が会津に転勤できたので、僕だけが1日置きに会津へ。僕のキャリーケースには、洗面用具とパジャマと着替えが常に入っていて、その日急にどちらの家に泊まることになっても対応できる。1日置きに別の家に泊まっていると、どちらも仮の家に思えてくる。

 僕たちは、現在の収入も被曝(ひばく)回避も手放したくはなく、疲弊する道を自ら選んでいる。

 実家の親が言う。「そんなに大騒ぎすることか? みんな福島市にいるんだべ?」福島市の知人が言う。「まあ、そんなに(放射能に)神経質にならないで」

 でも僕は今朝も福島市の家を出る。「ああ、明日の朝は会津から出発だから、可燃ごみを出せないな」と思いながら。(漫画と文・福島市の高校美術教師 赤城修司さん)

(2013年2月19日朝刊掲載)

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