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連載・特集

和合亮一 言葉を信じて 3.11から2年 <上> 古里は命 守り生きよう

 福島市で県立高校の国語教諭をしながら、詩人として発信を続ける和合亮一さん(44)。東日本大震災直後の2011年3月16日午前4時23分から、インターネット上の短文投稿サイト「ツイッター」などで、言葉を紡いでいる。1999年に第1詩集「AFTER」で中原中也賞を受けて以来、交流のため訪れている山口市で、言葉の力、過去の反省と未来に託す希望について語った。(渡辺敬子)

 <山口市の小鯖小に招かれた和合さん。体育館に集まった3~6年の児童に語った>  「ふるさと」の歌は知っているよね。古里ってどんな場所だろう。思い出がある、好きな人が住む、今の自分がいる場所だよね。

 古里の川で魚を釣るな、山で遊ぶなと言われたら、どう思う。春の日もマスクを着け、肌を出さず、外出はなるべくしないで、と言われたらどうする。

 あの日、地球の下から叫び声のような不気味な音がした。僕は校舎1階会議室の窓から外へ出た。波打つように地面が揺れた。最初の揺れが収まると、雪が降りだし髪の毛は真っ白になった。天変地異。天と地が変わる。古里が全く違うものになる。そんなことが突然、一瞬に起きた。

 原子力発電所が爆発した。風が吹き、福島市も放射能の通り道になった。3月14日夜に雨が降った。「雨に触れないように」と放送があった。おかしいよね。一人一人に与えられた自然の雨なのに。

 遊び場だった山や川を奪われてしまうなんて。外で遊ぶのは心配だし、魚釣りには不安な気持ちがある。

 福島の小学5年生の作文を紹介しよう。

 僕は大人になり、結婚し、子どもが生まれる。大きくなって結婚し、孫ができる。その間に100年たつ。震災と放射能の問題は解決していないと思う。だから僕は勉強する。震災で何が起き、どれだけの人が亡くなり、何が間違っていたのかを子どもに伝える。小さなことかもしれないが、未来に届けたい―。そんな内容だ。

 今の自分を友達や家族に伝えていますか。楽しい、悔しい、悲しい。ちゃんと伝えないと駄目。言葉というのは、言葉に込めた心が大事なんだ。気持ちが言葉になる。何が間違っているのか。つらいのか。勇気を持って伝える。正しいことを正しいと言える人間になるために勉強する。

 強い人と笑ったり喜んだりするのも楽しいかもしれない。でも、強い人と弱い人の言葉のどっちに耳を傾けるのが大切だろうか。

 年齢や考え、国の違いは関係ない。古里は一つ。風と緑と土と水があるから古里。心がある。誇りがある。友達、家族がいる。自分たちの言葉がある。古里は自分自身。自分の命。古里を、言葉を守って生きてほしい。

「決意」 和合亮一

福島に風は吹く
福島に星は瞬く
福島に木は芽吹く
福島に花は咲く
福島に生きる

福島を生きる
福島を愛する
福島をあきらめない
福島を信ずる
福島を歩く

福島の名を呼ぶ
福島を誇りに思う
福島を子どもたちに手渡す
福島を抱きしめる

福島と共に涙を流す

福島に泣く
福島が泣く
福島と泣く
福島で泣く

福島は私です
福島は故郷です
福島は人生です
福島はあなたです

福島は父と母です
福島は子どもたちです
福島は青空です
福島は雲です

福島を守る
福島を取り戻す
福島を手の中に
福島を生きる

福島に生きる
福島を生きる

福島で生きる
福島を生きる

福島で生きる
福島を生きる

わごう・りょういち
 東日本大震災以降、「詩の礫(つぶて)」「詩の黙礼」「詩の邂逅(かいこう)」の詩集3部作をはじめ、インタビュー集や対談集を相次ぎ刊行。最新刊は「詩の礫 起承転転」。音楽家の遠藤ミチロウや大友良英と福島を盛り上げるNPO法人プロジェクトFUKUSHIMA!を発足。2006年、「地球頭脳詩篇」で土井晩翠賞。国内外で詩の朗読をしている。

(2013年3月12日朝刊掲載)

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