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「広島の力 映画で表現を」 クラーク監督が原爆資料館を見学

■記者 東海右佐衛門直柄

 米アカデミー賞ドキュメンタリー部門受賞者のマルコム・クラーク監督(55)が15日、広島市中区の原爆資料館を巡った。かつて同館を訪れた著名人にインタビューするドキュメンタリー映画の制作準備が目的。被爆者の遺品を前に「戦争の無益さを発信する広島の力を映画で表現したい」と決意を語った。

 映画は「戦争のない世界へ」(仮題)。ゴルバチョフ元ソ連大統領やジミー・カーター元米大統領たち政治家を中心とする数十人にインタビューを申し込み、被爆地訪問が政治信条や思想に与えた影響を聞く。被爆10年後に白血病のため12歳で亡くなった佐々木禎子さんの物語も織り込み、非人道性を描く。

 この日、クラーク監督は原爆慰霊碑に花を手向け、資料館を約1時間かけて歩き、熱線でぼろぼろになった学生服や人影が残る石に見入った。「実際に遺品を見て胸が揺さぶられた。過去を忘れず伝える意義を実感した」

 クラーク監督は、悪性リンパ腫と闘う男児が、他の患者を手助けする姿を追った映画で1989年に米アカデミー賞を受賞した。

 「戦争のない世界へ」のインタビューは3月開始予定。チベット仏教の最高指導者でノーベル平和賞受賞のダライ・ラマ14世から内諾を得たという。「広島を訪れた経験が水滴の波紋のように、世界の指導者たちの心に広がる様子を描きたい」と監督。2011年1月ごろの完成を目指す。

(2010年2月16日朝刊掲載)

 

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