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救護被爆の基準緩和 健康手帳交付 厚労省方針 「新指針」通達へ

■記者 東海右佐衛門直柄

 原爆投下後、救護活動などに当たった人への被爆者健康手帳の交付要件の見直しで、厚生労働省は15日までに、広島、長崎4県市が昨年11月にまとめた新指針に沿って審査するよう都道府県に通達する方針を決めた。

 いわゆる救護被爆は「入市被爆」の区域外で救護に当たった人たちが対象となる。手帳交付申請の却下処分をめぐる訴訟で敗訴した広島市は昨年11月、広島県、長崎県、長崎市とともに基準を緩和した新審査指針を決定。4県市で順次運用を始めている。

 厚労省健康局総務課は「司法判断を踏まえて策定された新しい指針を尊重した。審査結果に地域差が出ないよう、すみやかに指針に沿うよう促す」と説明。今月中にも都道府県に通達文書を郵送する。

 被爆者健康手帳の審査は国からの法定受託事務。ただ、救護被爆をめぐり国は統一的な基準を示さず、各都道府県が広島市や長崎市の指針に沿って運用してきた。

 新指針は、救護や看護などの際の認定要件である被爆者との接触者数を、従来の「10人以上」から「1日5人以上」に緩和。接触がなくても(1)被爆で負傷した人が15人以上いた寺などの施設(2)同5人以上がいた病室などの閉鎖空間―のいずれかに、おおむね2日以上とどまった人も認定対象とした。

 さらに、これら数値基準を満たさなくても個別審査で「認定に相当する被爆事実」が認められる場合は柔軟に手帳を交付する。

 広島市に対する救護被爆の手帳交付の月間申請件数は、市が敗訴した昨年3月は5件だったのに対し、新指針を決定した後の昨年12月は45件、1月は48件と急増している。

救護被爆者
 被爆者援護法第1条3号に定める「身体に原爆の放射能の影響を受けるような事情の下にあった者」を指す。原爆投下後、被爆者の救護や搬送などに当たった人。2週間以内に立ち入れば「入市被爆」と認められる、爆心地からおおむね半径2キロの区域外が対象となる。2009年3月末で2万4238人と、被爆者全体の約1割を占める。

(2010年2月16日朝刊掲載)

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