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連載・特集

永田町発 どうする憲法改正 <5> みどりの風 亀井静香氏

96条先行 首相のおごり

 ―憲法を改正しやすくするため96条に定めた国会発議要件のハードルを下げるべきだという主張をどう思いますか。
 間違いだ。憲法は為政者を国民が縛るためのものだ。権力を握った人間はそれを振りかざしたがる。人の胸の中にはそういう「種子」が潜んでいる。自分だって持っている。

 だから、憲法は普通の法律と違って重い。権力者が改正しやすいように手続きを見直そうなんて本末転倒。泥棒に家の鍵を渡すようなもんだ。安倍晋三首相のフライングだ。

 ―改憲の是非は。
 改憲はすべきと思う。日本人が長い間営んできた良いものを守ろうという精神が流れていないからだ。

 だが、子々孫々に新たな国家の基本法を示す資格は今の国民にない。日本人が共通の価値観として持っていた他者への思いやり、たおやかな心が見えない。国民がそれらを取り戻し、憲法をわがこととして考えないと改正すべきじゃない。

 ―政治の「右傾化」が指摘されています。
 改憲は、平和の追求や基本的人権を大事にすることを、より分かりやすく規定するよう考えればいい。しかし、簡単に戦端を開くための改憲との誤解を海外に与えている。政治家の議論や発言が乱暴だからだ。

 戦争体験を持つ政治家が少なくなったこともあろうが、それ以前に弱い立場にある人への思いやりを失っている。日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長の従軍慰安婦発言も弱い立場の人へのシンパシーが感じられない。

 ―改憲は夏の参院選の争点になりますか。
 ならないね。慰安婦発言で維新の会に求心力がなくなり、自民党は連立相手の公明党が嫌がることはできない。  首相や自民党におごりが見える。96条の先行改正や、国民合意を得られないまま原発を再稼働させようとする動きがそうだ。昨年の衆院選での自民党大勝を国民がどう受け止めているか。参院選は、民意の振り子が振れる。(城戸収)=おわり

(2013年5月30日朝刊掲載)

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