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江波の集会所 シュモー会館移転保存 市、実施設計へ

■記者 東海右佐衛門直柄

 広島市は、中区江波二本松の集会所「シュモー会館」の移転保存に向け、実施設計に入る方針を決めた。会館は米国の平和活動家、故フロイド・シュモー氏が戦後、被災した被爆者のために建てた。広島南道路の整備予定地にあり、市は2011年度の移転完了を目指す。

 会館は1951年に建てられた木造平屋の約55平方メートル。シュモー氏が49年から53年にかけて江波、皆実、牛田の3地区に「ヒロシマの家」として建てた被災者用の住宅、集会所計21棟のうちで唯一現存し、町内会が管理して住民が使っている。

 市は10年度の一般会計予算案に移転保存の実施設計費120万円を計上。11年度に建物を基礎部分から切り離し、持ち上げる手法で移転させる計画だ。

 市は、現在地から50~60メートル北側の江波皿山公園に隣接した国有地を移転用地に想定。賃借か取得かを含め中国財務局と調整する。

 シュモー氏は森林学者で、平和主義を信奉するクエーカー教徒でもあった。「原爆投下の罪を償おう」と全米から集めた募金4千ドルを携えて広島を訪れた。市は1983年、特別名誉市民の称号を贈っている。

 会館を管理する江波二本松1、2丁目町内会の河村明治会長(69)は「シュモーさんの思想が詰まった建物。ずっと大切に使う」。市平和推進課は「広島の惨状を知り、復興へ向けて立ち上がったシュモーさんの功績を伝える場としたい」と説明している。

(2010年2月20日朝刊掲載)

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