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艦載機移転 行程表通り 防衛相 岩国市長に表明

■記者 広田恭祥

 北沢俊美防衛相は20日、岩国市で福田良彦市長らと会談し、在日米軍再編に伴う米海兵隊岩国基地への空母艦載機移転を、自公政権下で日米合意したロードマップ(行程表)に従って進める方針を示した。また、米軍普天間飛行場(沖縄県)移設先に岩国基地は考えていないと表明。同市の愛宕山地域開発事業跡地の転用策は具体的に示さなかった。

 北沢防衛相は岩国基地を視察後、榛葉(しんば)賀津也副大臣らとともに30分余り、福田市長、桑原敏幸市議会議長らと会談。艦載機移転に関し日米合意の経緯を検証済みとした上、「岩国の一連の(再編関連)事業を予算計上しており、方向性はご理解いただけると思う」と述べ、変更はないとした。

 艦載機離着陸訓練(FCLP)の恒常施設整備は「岩国とその周辺でやることはない」と言明。岩国が普天間移設先になるとの懸念には、「そんなことは検討すらしたことがない」と否定した。

 福田市長は、艦載機移転を計画通り進める政府方針を参院議員への答弁書で知らされたことに触れ、「検証の中身など情報は一切ない。十分な説明が必要だ」と求めた。安心・安全対策や地域振興への協力も要請した。

 政府が取得費を予算計上した愛宕山跡地の用途について北沢防衛相は「意見調整は知事や市長に大きく委ねたい」と説明。一方、同日夜の住民との意見交換会では「地元の皆さんの要請、豊かな発想を聞かせてほしい」との認識を示した。

 米軍再編をめぐって民主、社民、国民新の3党連立合意は「見直しの方向で臨む」としていた。


<解説>政府の説明姿勢に疑問


■記者 広田恭祥

 北沢俊美防衛相の就任後初の岩国訪問は、米海兵隊岩国基地への空母艦載機移転計画の推進表明となった。鳩山政権が掲げる「再編見直し」に期待した住民の失望は大きく、説明責任における政府の姿勢に疑問符がつく。

 岩国問題については防衛相自ら、普天間飛行場移設問題の決着後に検討する考えを示した。昨年11月には岩国訪問した榛葉賀津也副大臣も岩国を含めて検証するとしたが、地元説明では既に検証済みで「変更なし」だった。

 昨年末に政府が艦載機移転関連予算と愛宕山地域開発事業跡地の取得費を計上した説明はつくが、順序が逆ではないか。愛宕山跡地の米軍住宅化に反対する住民は防衛相との意見交換会で直接、「再編見直しのマニフェスト実行」を強く求めた。

 一方、福田良彦市長や市議会の多数は移転に協力姿勢。跡地も市、県が赤字解消を最優先に買い取りを国に求めた経緯がある。こうした地元の現状もあり政府は「岩国は計画通り」と判断したとみられる。

 北沢防衛相は住民との対話で「日米合意も重いが、国民の声はさらに重い」と述べ、前政権の市庁舎補助金凍結に象徴される「アメとムチ」の手法は今後一切ないとした。

 艦載機移転への不安や負担をどう軽減するのか。今後も住民と向き合い、答えを示さなければ、理解と合意が得られるとは思えない。

(2010年2月21日朝刊掲載)

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