×

連載・特集

検証 山本県政1年 国策への対応 上関判断先送りに批判集中

オスプレイはあっさり容認

 「公約違反」「知事を辞めるべきだ」。3月の山口県議会定例会。傍聴席から批判の声が相次ぎ、本会議は一時中断に追い込まれた。中国電力による上関原発建設予定地(上関町)の公有水面埋め立て免許の延長申請。許可、不許可の判断を1年程度先送りする考えを表明した山本繁太郎知事に対する反対派の不満が爆発した瞬間だった。

 山本知事が示した先送りの理由は、上関原発が国のエネルギー政策に位置付けられているかどうかを、中電が確認する必要があるため。昨年末の政権交代で発足した安倍政権は、2030年代に原発稼働ゼロにするとした民主党政権の方針を見直し、上関原発を含む新増設は「専門的な知見を十分蓄積し政治判断する」(茂木敏充経済産業相)とした。

 県議会では「やむを得ない」「県民への裏切り」と賛否が交錯したが、反対派は山本知事が方針転換したと批判を強めている。

 山本知事は、免許延長を認めず失効させる方針を示唆した二井関成前知事の姿勢を継承し、昨夏の知事選で「脱原発依存は当たり前」と主張。10月の免許期限切れ前に中電から延長申請を受けた際は「不許可にすることになる」と明言した。

 しかし、その後、中電に4度の補足説明を求めて実質的に可否の判断を先延ばし。最終的に先送りを決めたことに批判が集まった。

「政権追従」の声

 安倍政権に追従していると指摘される山本知事のスタンスは、米海兵隊岩国基地(岩国市)をめぐる問題にも表れている。

 垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ第2陣12機を先行搬入する米側の計画が県と岩国市に伝えられた4月、山本知事は県庁を訪れた防衛政務官に「事前に聞いていた」と述べ、あっさりと容認。福田良彦岩国市長が「岩国に陸揚げする必要性を感じない」と反発したのとは対照的だった。

 7月下旬に先行搬入された12機は当初、8月5日までに沖縄県の普天間飛行場へ配備する計画だった。が、沖縄でのヘリコプター墜落事故で10機の移転延期を米側が決めると、山本知事は岩国基地での滞在延長を「やむを得ない」と述べた。

 県労連などでつくる「安保廃棄・岩国基地撤去県実行委員会」のメンバーが県庁に詰め掛け、岩国基地担当の小松一彦理事に「国の顔色ばかり見て、住民の気持ちを考えていない」と抗議する場面もあった。

「バランス欠く」

 「首相の足下(そっか)の県として全力で取り組みたい」。安倍晋三首相が昨年末に地元入りした際、県庁で出迎えた山本知事が述べた言葉は、国策に対する県の姿勢を象徴するものだった。

 2年目を迎える山本知事は先送りした原発問題の決着に加え、空母艦載機移転やオスプレイ問題を抱える岩国基地への対応で重要な判断を迫られることも見込まれる。4期16年の二井前県政を継承して船出した山本知事に対し、随所で「バランス感覚に欠ける」との指摘も聞かれる。(門戸隆彦)

(2013年8月24日朝刊掲載)

年別アーカイブ