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本格討議を開始 APECジュニア会議

■記者 明知隼二

 アジア太平洋経済協力会議(APEC)参加国・地域の青少年が集う「APECジュニア会議in広島2010」は2日目の21日、広島市中区の原爆資料館東館で本格討議に入った。

 37人の参加者は平和記念公園で原爆被害について学んだ後、米国人詩人アーサー・ビナードさんの基調講演を聞いた。ビナードさんは日本の落語や米国の遊び歌に触れながら言葉の面白さと力強さをユーモラスに解説。為政者の「言葉のごまかし」を見破ったり、被爆体験を語り継いだりするために「想像力を働かせ、心の底からの表現を追求して」と呼び掛けた。

 続いて参加者は、環境▽教育▽異文化理解▽食と貧困―の四つのワークショップで討論を始めた。「いすと机しかない学校もある」などと自国の教育事情を明かしたベトナムのミン・レー君(16)は「未来の礎である教育にこそ予算を割くべきだ」と問題提起した。

 22日もワークショップを続け、合間に宮島(廿日市市)を見学する。また広島市内ではAPEC高級事務レベル会合が23日まで2日間の日程で開幕する。


被爆の惨状に衝撃 参加者 資料館見学や証言聞く


■記者 明知隼二、桑島美帆

 「APECジュニア会議」に参加しているアジア太平洋地域の青少年たちは21日、広島市中区の平和記念公園をめぐり、原爆被害に触れた。同日夕には、市内で22日に開幕するアジア太平洋経済協力会議(APEC)高級事務レベル会合の参加者も原爆資料館を見て回った。

 午前に資料館を訪れたジュニア会議参加者34人は、2歳のときに被爆し白血病のため12歳で生涯を閉じた佐々木禎子さんの折り鶴などを見学。英語で案内した舟入高(中区)の生徒たちと一緒に公園内を回った。

 シンガポールのミシェル・シムさん(17)は「回復を祈って鶴を折ったサダコの物語に心を動かされた。平和のために何かしなければと思う」。祖母の親類が広島で被爆し亡くなったという台湾の林若瑄さん(17)は「資料館を見て自分も被爆を体験した気になった」と顔をしかめた。

 続いて原爆資料館東館で、被爆直後の惨状を語りかける松島圭次郎さん(81)=佐伯区=の英語での証言を押し黙って聞いた。「二度と核兵器を使ってはいけないとの思いが心に届いた。家族にこの経験を伝えたい」とタイのポーンピパット・カセームサップ君(17)。

 一方、高級事務レベル会合の参加者のうち14カ国・地域の政府関係者ら108人は、旧市民球場(中区)に展示されている折り鶴や原爆資料館を見学。APEC事務局のムハマド・ヌール・ヤコブ事務局長(58)=マレーシア=は「平和は努力して築き上げることに気付いた。平和にとって重要な(アジア太平洋地域の)繁栄をどう築くかを考えたい」と語った。

(2010年2月22日朝刊掲載)

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