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連載・特集

3・11 3年目の絆 <上> つなぐ 種が縁 思いやりを歌に

 東日本大震災から11日で3年。島根県内では復興途上にある被災地との「絆」が育まれている。子どもの思いを届ける歌手や、支え合おうとする震災避難者の姿を紹介する。

 江津市桜江町の桜江小多目的ホールで、7日にあった震災被災地を応援する校内集会。元気に合唱する全校児童112人に交じって、ギターを演奏するシンガー・ソングライターのhacto=はくと、本名山内英明=さん(40)の姿があった。「みんなの元気を届けるよ」。会場は笑顔に包まれた。

児童の詩に作曲

 桜江小とhactoさんの出会いは1年前。昨年2月、当時の4年生が、大震災2年を前に「荒れた被災地に花を植えよう」と地域に呼び掛け、種を集めた。被災者に花の種を贈る活動を続ける福島県相馬市の市民団体の事務所に同校の教頭が種を届けた時、たまたま居合わせた。

 hactoさんは大震災半年後から毎月、埼玉県川口市の自宅から被災地に通い、支援ライブを開く。鳥取市出身で、島根県もなじみの地。活動に共感し、教頭に学校訪問を申し出た。翌3月に同校の震災を考える集いに出席し、現地の様子を報告した。

 帰り際、児童から詩を渡された。「小さな夢のたね」「ひとりじゃない」…。児童の思いを届けるため、詩に曲を付け歌にした。「島根の子どもも応援してるよ」。被災地の仮設住宅のイベントなどで歌い始めた。

被災地から声援

 昨年8月の県西部を襲った集中豪雨。桜江町も床上浸水や土砂崩れが相次いだ。相馬市の被災者が集う朝市。歌い終えたhactoさんに住民が「島根の沈んだ心を支えたい」と寄せ書きを提案。40人のメッセージが集まった。

 hactoさんが桜江小に寄せ書きを届けると、今度は桜江町から被災者を励ます寄せ書きを託された。「相馬市と島根がつながった」と振り返る。

 相馬市の市民団体の渡辺義夫副理事長(53)は「届いた種は、仮設住宅のプランターで花を咲かせた。子どもの思いが被災者の力になっている」という。

 hactoさんは、この1年で江津市を8度訪れた。自主製作で、桜江小児童のコーラスを入れたCDも作った。今月6日、同小の活動を知った浜田市松原小からも花の種を受け取った。「子どもの優しさが被災地とのつながりを強くする」。懸け橋としての思いを強める。(森田晃司)

(2014年3月10日朝刊掲載)

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