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「黒い雨」降雨域の時間変化を推計 原医研教授ら 

■記者 東海右佐衛門直柄

 原爆投下後の「黒い雨」に関する広島県と広島市の調査で、解析を担当した広島大原爆放射線医科学研究所の大滝慈教授のグループが、時間経過に応じた降雨エリアの最終推計結果をまとめた。投下45分後の1945年8月6日午前9時ごろ市西部で降り始め、10時ごろ最も広範囲となり、午後3時ごろにやんだ―と結論付けた。

 県と市は2008年、被爆者、黒い雨の体験者を中心にした市内と周辺の3万6614人に調査用紙を郵送。回答者2万7147人のうち、場所が特定できる体験者は1844人だった。

 大滝教授たちは市内と周辺を94地区に分割し、1844人を体験場所ごとにグループ化。10人以上に達した地区を「降雨エリア」と認め、降り始めの時刻や降雨時間、雨の強さの記述を精査した。

 その結果、黒い雨は(1)午前9時ごろ旧古田町(西区高須)を中心に降り始めた(2)10時ごろ最も拡大(3)降雨域は北西方向へ移りながら次第に縮小(4)午後3時ごろ旧加計町(安芸太田町)付近で雨が上がった―と判断した。

 今年1月25日、大滝教授は市原子爆弾被爆実態調査研究会で解析経過を報告。その後、60年以上前の記憶を基にした調査であることを踏まえ、降雨エリアの認定を「5人以上」から「10人以上」に改め、最終推計した。

 大滝教授は「降雨エリアの時間経過に応じた解析がまとまったのは初めて。健康診断特例区域の指定拡大に向け、根拠となるデータ」としている。

黒い雨
 原爆投下直後に降った放射性降下物を含むとされる雨。国は1976年、爆心地から北西方向に広がる楕円(だえん)形のエリア(南北約19キロ、東西約11キロ)を大雨地域とし、健康診断特例区域に指定。爆心地から北西方向の南北約29キロ、東西約15キロで大雨地域を除く一帯は小雨地域とし、特例区域に入れなかった。これに対し、2008年の広島県と広島市の調査を基にした広島大原爆放射線医科学研究所の大滝慈教授たちの解析では、大雨地域はやや北西にずれ、降雨範囲は6倍程度に及ぶ。

(2010年2月24日朝刊掲載)

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