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きのこ雲 高さ16キロか 広島市立大調査 市など推定の2倍

■記者 東海右佐衛門直柄

 原爆投下で広島の上空に発生したきのこ雲の高さが約16キロに達した可能性のあることが26日までに、広島市立大大学院情報科学研究科の馬場雅志講師(知能工学)のグループの調査で分かった。広島市などが用いてきた推定高度の2倍となる。

 馬場講師たちは、原爆投下直後に米軍観測機が瀬戸内海上空で撮影したきのこ雲の写真を解析した。1950年の地図を基に、コンピューターグラフィックス化した当時の海岸線を写真に重ね合わせて計測するなどし、撮影位置を「爆心地の南東56キロ、高さ8.68キロ」と判定。きのこ雲の形状などから高さを約16キロと算定したという。

 原爆投下直後に降った「黒い雨」の降雨域をめぐって市と広島県が1988~91年に設置した専門家会議は、きのこ雲について投下40分後に呉市から撮られた写真を基に「雲頂高度8080メートル、横径約4500メートル」と推定した。

 原爆により飛散した放射性物質は、高温の気流によってできた、きのこ雲とともに上空に上がり、地上に降下したとされる。きのこ雲が従来の推計より高かったことが確認できた場合、黒い雨とともにより広く降下した可能性が高くなる。馬場講師は「国が指定する黒い雨の健康診断特例区域(大雨地域)の拡大につながるデータ」としている。

 今後、馬場講師は、黒い雨の降雨域を把握するため市が2010、11年度に実施する気象シミュレーションに協力。きのこ雲を地上から撮った別の写真や映像も使って検証を進め、最終的な推計値を市に報告する。

(2010年2月27日朝刊掲載)

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