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原民喜の「夏の花」初の漫画化 8月発売

■編集委員 梅原勝己

 被爆作家原民喜(1905~51年)の代表作「夏の花」が初めて漫画化される。集英社系列のホーム社(東京)が6月に刊行を始めるシリーズ「名作漫画文庫(仮称)」の1冊。広島市中区出身で東京在住の漫画家山田雨月さん(36)=本名松元美樹=が作画を担当する。

 「夏の花」は、広島市幟町(現中区幟町)の実家で被爆した民喜が、直後の惨状や避難の道筋で見た人間模様を、冷徹なリアリズムで描いた原爆文学の傑作。漫画は約190ページの下書きと一部原稿が完成し、8月上旬の発売へ向け、準備が進んでいる。

 山田さんは1995年デビュー。主に少女漫画誌「マーガレット」に執筆し「春一番の吹く頃」「マニッシュ・ガール」などの作品がある。「民喜作品特有の詩的イメージを大切にした。原作には私の実家(中区西白島町)近くも描かれており、民喜の見たものを追体験する気持ちで作画した」と話す。

 同シリーズは「坊っちゃん」「走れメロス」など近現代日本文学の名作の魅力を漫画で伝える企画。シリーズ立案者でホーム社コミック編集部取締役の吉倉英雄さん(55)は「数年前の『蟹工船』ブームに見られるように、社会不安による危機感から、若者たちが重いテーマを正面から受けとめようとしている。民喜作品が問いかける重さを投げかけてみたい」と期待している。

(2010年3月13日朝刊掲載)

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