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96年ノーベル平和賞 東ティモール大統領 ラモス・ホルタ氏に聞く

■記者 金崎由美

ヒロシマから復興学びたい

 来日中のノーベル平和賞受賞者、ジョゼ・ラモス・ホルタ東ティモール大統領(60)=写真=は18日、広島入りし、中国新聞のインタビューに応じた。「惨禍を経て、文化的にも経済的にも復興したヒロシマから学びたい」と期待を述べた。広島市内には20日まで滞在。19日午後6時からは中区の原爆資料館である対話集会「ラモス・ホルタ大統領との対話~核兵器廃絶と平和構築を目指して」(中国新聞社主催)に出席し、被爆者や市民と意見交換する。

市民との対話で機運を

 民族独立をめぐる紛争を乗り越え、平和国家建設を進める東ティモールのジョゼ・ラモス・ホルタ大統領に18日、通算3回目という被爆地訪問に寄せる思いを聞いた。

 ―大統領としては初の広島訪問ですね。今回、特に希望された理由は。
 日本に来たらできるだけ広島に立ち寄り、原爆資料館を見学している。それはヒロシマが人類の歴史的、人道的に最も過酷な側面を象徴しているからだ。残虐な兵器が、軍事目標ではなく市民の頭上に使われた。しかもその影響は、放射線被害という形で現在まで続いている。

 鶴を折りながら困難と闘った佐々木禎子さんの物語が心に染み入り、私をヒロシマに向かわせている。サダコの物語はすべての人の胸を打つ。世界で繰り返し語られるべきで、核兵器廃絶への力になる。

 ―東ティモールは、日本やヒロシマから何を学びますか。
 原爆の悲劇と、戦争の醜さを知ることはもちろんだが、それだけではない。惨禍を経て、文化的にも経済的にも立ち直った。1945年8月以降、平和の推進で世界をリードし、アジアの国々から信頼を得ている。東ティモールも、日本のように平和を貫きたい。

 今後は広島市と、わが国第2の都市(マナトゥト)とで姉妹都市提携ができないか探る。留学生の交換事業や、観光客の誘致にも取り組みたい。わが国はいまや平和な国となり、非政府組織(NGO)で活動する日本人もたくさん住んでいる。さらに交流を増やしたい。

 ―19日の県民や市民との対話に何を期待しますか。
 5月の核拡散防止条約(NPT)再検討会議を控えた時期でもあり、ノーベル平和賞受賞者の間でも、何ができるかを話しているところだった。この機会を核兵器のない世界を目指す市民の機運を高め、行動をうながす場としたい。

 平和市長会議や多くの市民、教会組織などがさらに結束し、保有国に核兵器の廃棄を迫っていくべきだと考えている。

ラモス・ホルタ氏
 1949年、ディリ生まれ。米アンティオック大で平和学修士号取得。74年、東ティモール独立革命戦線中央委員会委員。1996年に、ノーベル平和賞を受賞した。2007年5月から現職。

(2010年3月19日朝刊掲載)

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