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広島復興をめぐる「光と影」 韓国・朝鮮社会研が資料集 本紙記事1418本を収録

■編集委員 西本雅実

 被爆からの復興をめぐる「光と影」をとらえ直した「戦後広島のマイノリティの立ち退き関係新聞記事資料集」を、広島韓国・朝鮮社会研究会が編さんした。「在日」や被爆者を含む市民がどう移転を迫られ、苦難に遭ったのかにも焦点を当て、1945年から78年までの中国新聞紙面から1418本の関連記事を収める。今に続く都市開発の課題をみる資料集でもある。

 研究会長を務める広島大大学院総合科学研究科の李東碩(イトンソク)准教授(49)や広島市立大、大阪市立大を含む大学院生、元高校教諭らメンバーが、科学研究費補助金も得て3年ごしで作業を進めてきた。

 収録記事は、被爆3カ月後に始まる広島市長らの復興構想と政府への陳情▽1949年の平和記念都市建設法公布を機に進む公営住宅・公園・街路建設▽高度経済成長下でも取り残された河川敷沿いの住宅群の立ち退きと強制執行▽県・市による基町(中区)の再開発事業が終わる78年までを12項目に分類し、目次に見出しや対象地域なども添えて編さんした。

 編集メンバーで阪神大震災の復興も研究する本岡拓哉さん(30)は「広島の復興はその規模とプロセス、報道量とも類をみない。居住の権利をどう保障するのかを未来に生かす体験でもある」と受け止める。祖父が基町で立ち退きに遭ったという在日朝鮮人の権鉉基(クォンヒョンギ)さん(27)は「同胞社会でも語られることの少ない歴史を見つめられた」と編さんの感想を述べる。

 韓国出身の李准教授は「復興過程で陰に追いやられた人々とヒロシマの歩みを通し、今日の格差問題も考えてほしい」と、資料集を広島大中央図書館や広島県立図書館などに収め閲覧を図る。

(2010年3月23日朝刊掲載)

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