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井上ひさしの新作朗読劇 20代の演劇研修生熱演 被爆直後 生命の賛歌

■記者 道面雅量

 劇作家井上ひさしさんが、原爆に被災した直後の広島を題材に朗読劇「リトル・ボーイ、ビッグ・タイフーン」を書き上げた。被爆の翌月に広島を襲った枕崎台風の史実も交えた劇で、日本ペンクラブ主催のフォーラム「災害と文化」で初披露した。

 作品は、きのこ雲の下の惨状をつぶさに伝えるとともに、発行不能になった中国新聞社が「口伝隊」を組織してメガホンで伝令を広めた逸話を紹介。さらに、被爆に追い打ちをかけた台風の猛威と、原爆で生き残った子どもたちが企てる占領軍への敵討ちの始末を絡めて描く。絶望の極みでなお、生きることを肯定する物語だ。

 東京都渋谷区で2月22日にあったフォーラムでの初舞台では、新国立劇場の20代の演劇研修生14人が栗山民也さんの演出で熱演した。

 これまでにも「紙屋町さくらホテル」「父と暮せば」と原爆をテーマにした秀作を書いてきた井上さんは「枕崎台風の被害は原爆の陰に隠れがちだが、いつか関連づけて描きたいと思っていた」と感慨を深めていた。

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