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故佐々木雄一郎さんのネガ6万点 電子保存化へ

■編集委員 西本雅実

 ヒロシマを撮り続けた写真家佐々木雄一郎さん(1917~80年)のネガフィルムが、約6万点現存していることが原爆資料館の調べで分かった。資料館は、すべてのネガの電子保存化を決め、撮影日時や場所、被写体の説明を添えたデータベースの構築作業を新年度に進める。

 佐々木さんは現在の広島市中区西十日市町に生まれ、大戦中は内閣情報局発行のグラフ雑誌の撮影に携わり、1945年8月18日に帰郷。母や兄家族の死んだ場所を探し、廃虚で撮影を始めた。

 戦後の混乱期は、広島を訪れる外国人カメラマンの案内などをしてフィルムを確保。1947年に第1回平和祭(現平和記念式典)が開かれ平和記念公園となる爆心地一帯の変遷や、被爆の傷を抱えながら暮らしを再建していく市民の姿を中心に、写真店を営みながら亡くなるまで撮り続けた。

 「これらの写真が生き証人となってほしいと願い写し続けた」佐々木さんの思いをくみ、妻喜代美さん(88)と長男の塩浦雄悟さん(60)が、3年前に570枚のプリントを資料館に寄託。同館で昨年から企画写真展が始まったのを機に、廿日市市の自宅に保存していたネガも寄せた。

 これまでの調べで、1945年末までに撮影されたネガは、爆心地の島病院と原爆ドームをいち早く入れたカットをはじめ182点を確認。また、占領下50年のメーデーのデモ、バラックが立ち並ぶ中での平和記念公園建設、カラーで収めていた1958年の広島復興大博覧会など貴重なカットが多数見つかっている。

 前田耕一郎館長は「広島の歩みそのものといえる佐々木さんの写真をきちんと残し、未来にわたって伝えていきたい」と話している。

(2010年3月29日朝刊掲載)

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